2012年5月15日火曜日

コラム

http://column.keibalab.jp/interview/stabler/568/
桜花賞同様の2頭出しでオークスでも注目を集める石坂正厩舎。片やジェンティルドンナは桜花賞馬となり、片やエピセアロームは15着と極端な結果だったが、前者は2冠達成にさらなる良化必至で後者も虎視眈々と巻き返しに爪を研ぐ。今回はスポークスマンの古川慎司調教助手に桜花賞の勝因・敗因と、中間の状態と距離適性などを詳しく伺った。

新たなパートナーも絶賛!2冠達成に視界良好ジェンティルドンナ


-:今日はよろしくお願いします。まずはジェンティルドンナから、桜花賞後の調整について教えて下さい。

古川慎司調教助手:10日ほど短期放牧に出しましたが、厩舎に戻ってきた時は少し体が淋しく映ったので、レースのダメージが抜けきっていないのかなという印象は受けました。ガレ過ぎとはいかないまでも、少し細くなったという感じでしたね。レース後は馬が小さくなるものですが、体が回復しないまま戻ってきたという印象でしたね。ただ、帰ってきてからはチューリップ賞前に悩まされていた体温が不安定な面は一日もないですし、調教も休むことなく、しっかりと乗り込めています。ここまで順調に来ていますので、馬の調子はドンドン上がってきているように思います。

-:桜花賞前は毛艶が良くなってこない印象を受けました。

古:そうですね。桜花賞の時は熱発明けでチューリップ賞を使った影響もあって、完調とまではいかない状態でした。徐々に調子は上向きでしたが、本当の意味でマックスの状態には程遠い状態だったように思います。岩田ジョッキーの「まだ何かを持っている気がする」というコメントもありましたが、体調面に関してはまだ良くなる余地を残した状態での桜花賞でした。私たちはオークスの時はもっと良くなると期待していたのですが、放牧から帰ってきた時、思っていたほど良く見えなかったので、もしかしたらダメージが残っているのではと心配しましたが、取り越し苦労と言いますか、その後は気温の上昇と共に冬毛が抜け、毛艶も冴えて、今はすごく良い感じに仕上がってきていると思います。見栄えとか体つきの部分に関しては比べ物にならないくらい良くなっていますね。

-:オークスは2400mの距離になるのですが、この馬の精神面についてはいかがでしょうか?

古:そうですね、例えば同厩のエピセアロームの場合、外部の音であったり、人間や車両が行き来する気配であったり、プレッシャーに弱い面があります。ストレスを感じた時の表現方法としてチャカついたり、暴れるという仕草に表れる場合があります。もちろんジェンティルドンナも音に関して敏感なところはありますが、2頭を比べて決定的に違うことはレースでジョッキーの指示に従って折り合えるかどうかという点ですね。ジェンティルドンナの方が走ることに関してはドッシリしているように思います。それは2頭のレース振りにも表れているように思います。

馬は気が弱かったり、周りの馬を怖がったり、共通して弱いところを持っているものですが、それをいかに克服してレースで他馬より速く走ることに向けさせるかというのが、競馬というスポーツだと思います。大舞台で折り合えたり、ゴーサインを出せば瞬時に反応できるというのは、最終的にはメンタル面にかかっているのだと思います。


-:1番人気が予想されますが、不安なくレースに挑めそうですね。

古:相手関係も全く心配していないと言えば失礼かもしれませんが、負けるとすれば距離適性しかないと考えています。3歳牝馬によるこの時期の2400mはタフで、確実にハードなレースになることは間違いありません。それに耐えうるメンタルを備えていたとしても、最終的には脚質であったり、距離適性という部分で勝てないことが、もしかしたらあるかもしれません。


-:枠順についての希望はありますか?

古:そうですね、未勝利戦やシンザン記念にしても馬込みで問題はなかったので、どの枠・ポジションでも変わらない競馬が出来るとは思います。有利不利を考えれば内枠の方が距離ロスなく運べる面もありますが、外枠の方が直線で前が詰まるリスクが少ないという面もあります。ちょっとしたリスクの差ならスムーズに捌ける外枠の方が良いのではないでしょうか。ただ、馬込みという点では内外あまり関係ないように思います。

-:これまでのオークスの傾向としては、やっぱり桜花賞組が上位に来ることが多いですよね。

古:(桜花賞の)阪神の1600mはタフなコースですからね。ジェンティルドンナに関しては桜花賞でのポジション取り、脚の使い方、レース展開を見る限り、大丈夫だろうと思います。2400mに心配が残る内容ではなかったので、あまり不安は感じていません。

-:岩田騎手(NHKマイルCでの失格による騎乗停止中)から川田騎手への乗り替わりについて、ファンは気になると思います。

古:まず大丈夫だと思います。誰が乗っても感じることは同じだと思います。追い切りでも騎乗していますし、折り合いに関しては自信を持って乗ってくれるのではないかと思います。

-:川田騎手のコメントではどのようなものでしたか?

古:私は直接聞いていないのですが、あまりメディアに対して饒舌でない彼がすごく高揚しながら「乗り味が良い」「動きが良い」と絶賛していたようですね。岩田ジョッキーなんかは普通キャンター乗った時に「これは違う。走る」と言っていましたね。私は本当かなと思いましたけれどね。「普通キャンターだけでわかるのかな?」という意味でね。ただ、乗り手に共通してこの馬は走りそうだなと思わせてくれる馬であることは間違いありませんね。そして、「乗りやすい」「引っ掛からない」「コントロールしやすい」と口を揃えて皆が言いますね。レースにいっても乗り難しさを見せたことはないので、きっと大丈夫だと思います。

-:長距離輸送の経験はありませんね。

古:そこだけですね。まあ不安と言いますか、同じ条件の馬も他にいますからね。それはGⅠを勝つ馬なら克服してくれると思います。まあ、全姉(ドナウブルー)が長距離輸送での結果が出ていないのですが、輸送に関してはやってみないとわからないというのが正直なところです。2400mの距離と輸送に関しては能力の高さでカバーしてくれると思うとしか言いようがありません。

-:ジェンティルドンナのファンの方にメッセージをお願いします。

古:一頓挫明けのチューリップ賞を使って挑んだ桜花賞は100%の状態ではなかったですが、良いパフォーマンスで勝ってくれました。今回は何のトラブルもなく、順調にこられているので、2400mの距離と長距離輸送という課題はありますが、きっと克服してくれると思いますし、1番人気に応えて良いパフォーマンスを見せてくれると思いますので、応援よろしくお願いします。

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(取材・写真)高橋章夫




【古川 慎司】 Shinji Furukawa

小学5年生時に馬に興味を持ちはじめ、6年生より本格的に乗馬開始。栗東高校馬術部、京都産業大学を経て、滋賀県内の牧場にて1年半勤務。その後、競馬学校に入り1996年1月より栗東トレセンへ。2000年からダーレー研修プログラムでイギリス、ニューマーケットの厩舎などで学ぶ。イギリス人の友人に誘われアメリカのブリーダーズCを見に行ったことがきっかけでアメリカの競りに関わる仕事に携わるようになった。

本格的に日本からアメリカに移住する決心で就労ビザの手配を進めていたが'01年、同時多発テロの影響で全てが白紙になってしまう。人生の目標を見失い、日本での居場所を模索していたところ、
'02年5月、欠員が出たことで石坂厩舎へ。以後、現在まで調教助手としてヴァーミリアンやサンライズペガサス、サンライズキングなどの活躍を裏で支えてきた。

忘れられない馬はサンライズペガサス。「あの馬の背中の感触を超える馬には、まだ出会っていない」

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