ゴールドシップ復活。追い切りでかなり馬にヤル気が漲っていたが、最初のホームストレッチでも自らハミをとって前へと推進していこうとしていた。そこをなんとかなだめすかした内田博、実はいいポジションを取ろうとしてスタート直後から手綱を動かしていた。これで折り合いを欠いてしまっては、騎乗ミスとされても仕方のないところ。そこをうまく手の内で操ったのだから、栗東にかけつけて調教をつけた甲斐があったというものだろう。


3強の中で一番スタートが良かったのはジェンティルドンナ。パドックでややうるさいところをみせていたが、その勢いのままにベストのポジションを取ってみせた。4角から直線にかけても3頭のなかで一番手応えに余裕があるようには見えたのだが、予想コラムで触れたように、100%の仕上がりというところまではやはり持ってこれなかった。ダノンバラードすら交わせなかったことが、それを如実に物語っている。


そのジェンティルドンナを任せなかったのが本命を託したフェノーメノ。パドックでは抜群の気配を見せ、これはもらったと思っていたのだが、スタート直後から違和感を感じた。それは鞍上の誘導。


3番枠、内回りだけにインでじっとしていればいいのに、蛯名は外へ外へと誘導。1コーナーを回る時には8枠の両馬よりも外に持ち出しての追走となった。見た目もそうだが、それ以上にインが荒れているのか、それよりも湿った馬場を鞍上が嫌がったのか。そうとしか思えないような騎乗であった。


実際、直線では外目をついたにも関わらず、芝が掘れるように大きく跳ね上がり、フェノーメノの前への推進力はそがれてしまった。


余計なことを書いておけば、重馬場では勝てないという馬は最強馬にはなれない。そういった意味で、私の予想は根本から間違っていたのかもしれない。テレビの解説で元名騎手の岡部幸雄氏が輪乗りの際に語っていた。「(3強の中で)自分の競馬に徹した馬が勝つ」と。フェノーメノにはそれができなかった。


さて、復活劇を遂げたゴールドシップ。これでまた世代の頂点を極めたと言っていいだろう。勝負どころからあれだけ“わっせわっせ”になりながら結果を残したのだから、誰にも文句は言わせない。胸を張って次のステージへと向ってほしい。


◎ヨミトクケイバ編集長・初代編集長
早稲田大学政治経済学部卒。在学中に競馬に興味を持ち、スポーツニッポン新聞大阪本社を経て、競馬専門紙「1馬」(当時)のトラックマンとなる。主に美浦トレセンの南馬場取材班(想定班)として活躍。現在は退職し、競馬コラムサイト「ヨミトクケイバ」の編集長をつとめる。