2013年6月22日土曜日

だ!?

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競馬コラム
沸騰! 日本サラブ列島

ジェンティル、ゴールド、フェノー。
宝塚記念、“最強の4歳”はどの馬だ!?

島田明宏 = 文

text by Akihiro Shimada
photograph by Kiichi Yamamoto
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2013/06/21 11:30
「四強対決」が「三強対決」になってしまったが、それでも今年の「夏のグランプリ」は、きわめつけにハイレベルな戦いになりそうだ。
 ファン投票で選ばれたスターホースが競演するドリームレース、第54回宝塚記念は、6月23日、阪神競馬場の芝2200mで行われる。
 本番を10日後に控えた6月13日、競馬界に衝撃が走った。宝塚記念に向けて調整されていたオルフェーヴル(父ステイゴールド、栗東・池江泰寿厩舎)が肺出血を発症し、同レースを回避することが明らかになったのだ。一昨年の三冠と有馬記念を圧勝し、昨年の凱旋門賞で「勝ちに等しい2着」に惜敗した現役最強馬、オルフェーヴル。ファン投票1位に選出された主役の戦線離脱によって、宝塚記念の見どころがひとつ減ってしまったことは確かだが、これも競馬である。
 無事にゲート入りすることがいかに大変かをオルフェが教えてくれたと解釈し、残された11頭の走りに注目したい。

過去の直接対決の力関係から、1番人気はジェンティルドンナか。

 今年の古馬中・長距離戦線を牽引するのは、オルフェと、それを昨年のジャパンカップで負かした女傑ジェンティルドンナ(父ディープインパクト、栗東・石坂正厩舎)、昨年のクラシック二冠と有馬記念を制したゴールドシップ(父ステイゴールド、栗東・須貝尚介厩舎)の「OGG三強」と見られていた。
 そこに天皇賞・春を勝ったフェノーメノ(父ステイゴールド、美浦・戸田博文厩舎)が加わって「四強」の構図になったのだが、オルフェの離脱により、メンバーが一部入れ替わった「三強」になった。3頭とも同い年の「4歳三強」である。
 この三強の揃い踏みは宝塚記念が初めてになるが、ジェンティルドンナとフェノーメノは昨年のジャパンカップで、フェノーメノとゴールドシップは昨年のダービーと今年の天皇賞・春で対決している。
 ジャパンカップではジェンティルドンナが勝ち、フェノーメノは5馬身ほど離された5着に完敗。
 ダービーではフェノーメノが2着、ゴールドシップが5着、天皇賞・春ではフェノーメノが勝ち、ゴールドシップがまたも5着とフェノーの2戦2勝。
 こうした力関係の比較から、宝塚記念で1番人気に支持されるのはジェンティルドンナだと思われる。
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ジェンティルの不安材料をしいて挙げるなら……。

 昨年、牝馬三冠を制したジェンティルドンナは、3歳牝馬として史上初めてジャパンカップを勝った。これはとてつもない快挙であり、5歳のときジャパンカップを勝ったあのウオッカでさえ、3歳のときは4着に敗れている。
 今年の始動戦に選んだドバイシーマクラシックでは、道中掛かってしまい、終始外を回らされたことも響いて2着に惜敗。しかし、典型的な「負けて強し」の競馬だった。
 帰国後、じっくり時間をかけて調整され、栗東トレーニングセンターの坂路コースで行われた本追い切りでは、軽く仕掛けられただけで51秒8の好タイムを叩き出した。
「思った通りの調整ができました。体調面で何の不安もありません」
 と管理する石坂は自信をうかがわせる。臨戦態勢は整った。
 しいて不安材料を挙げるなら、初めて56kgを背負わされることと、「牝馬である」ということぐらいか。牝馬というのは、どんなに強い馬でも、原因不明の敗戦を喫することがままある。いくら理由を探しても見つからず、結局は「牝馬だから」と言うしかないような負け方。そして、何の予兆もなく、あるとき突然走るのをやめてしまったりする。
 ジェンティルもいつかはそうなるかもしれないが、ただ、今ではない、という気がする。
 総合力ではほかの二強とそう差はないのだが、「勝ち切る力」では、この馬が突出している。「終わってみれば一強だった」ということになるかもしれない。

主戦の内田博幸も手応えを感じるゴールドシップ。

 その馬名から「不沈艦」と呼ばれたゴールドシップは、単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持された前走の天皇賞・春で、よもやの5着に沈んでしまった。
 ペースが速かろうが遅かろうが、序盤は後方をマイペースで走り、自分に都合のいいタイミングだけを計ってスパートし、前をまとめて呑み込んでしまう……という、この馬の武器が不発に終わった。
 昨年の有馬記念で見せたような、無尽蔵のスタミナを背景にした超ロングスパートは、コーナーを回りながらブッ放すことができる小回りコースでこそ効力を発揮するのか。また、私たちは、この馬の母の父であり、同じ芦毛の王者として君臨したメジロマックイーンの姿を勝手にダブらせ、過度の期待をかけてしまっていたのか。
 いや、そうではないだろう。確かに「風格」ではマックイーンに及ばないが、皐月賞で見せた鋭さと、菊花賞と有馬記念で他馬をねじ伏せた力強さは、同じ時期のマックイーンを凌駕している。
 結果論だが、あまりに動けなさすぎた天皇賞のときは、ハードトレーニングで仕上がりすぎていたのかもしれない。
 それに対して今回は、付きっ切りで稽古をつけている主戦の内田博幸が引っ張り切れないほどの活力を見せている。
「馬がすごく前向きになっていて、自分から動いて行った」
 と内田は確かな手応えを得ているようだ。
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フェノーメノとの力関係はDNAの影響!?

 ただ、ひとつ不安なのは、フェノーメノとの力関係だ。
 ダービーでも天皇賞でも先着を許したゴールドシップが、「あの馬より先にゴールしてはいけない」と勝手に思い込んでいる可能性が、ある。肉食獣から逃げて生き延びるDNAが組み込まれているせいか、サラブレッドは群れのなかで序列をつくり、それに従って、食われずに済むよう走ろうとする。「ボスより後ろにいれば助かる」と信じ切っているかのように、毎回同じ相手に負ける馬というのは案外多い。
 だが、純粋な自然交配ではなく、人間の思惑によって血がつながれている(つまり人工的な生き物になっている)からか、競走能力の高い馬ほど、しばしば上記の序列を逆転した走りを見せる。
 ゴールドシップが思い込みを捨て、序列をぶち壊す走りをするか、見届けたい。

一角崩しがあるとすれば、武豊が手綱をとるトーセンラーか。

 フェノーメノは、おそらく単勝馬券の売れ方では「三強の3番手」という評価になるだろうが、またもゴールドシップを突き放し、そしてジェンティルドンナまでも置き去りにして、いの一番にゴールを駆け抜けるシーンも充分にあり得る。
 昨年のセントライト記念で見せたような、いかにもステイゴールド産駒という、中距離での爆発力には凄まじいものがあり、ここに来ての充実ぶりも素晴らしい。
「馬に風格のようなものが出てきたように感じます」
 管理する戸田がそう話したように、黒光りする馬体はさらに迫力を増している。
 筆者の個人的な予想を言うと、レース後、関係者が首をかしげるような負け方をする可能性が一番低いのは、このフェノーメノだと思う。
 一角崩しがあるとすれば、武豊が手綱をとるトーセンラー(父ディープインパクト、栗東・藤原英昭厩舎)だろう。ただ、水面を滑るように流れ込むタイプなので、直線に坂のある阪神コースでは、勝ち切るまでは難しいような気がする。
 11頭立てと言うと、いかにも寂しく響くが、強い馬との対決を避けた馬が多くいたからこその少頭数である。
 シーズンの上半期を締めくくるにふさわしい熱戦を、期待したい。

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