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2012.05.22
オークス回顧 ジェンティルドンナの圧勝劇が示すもの
ゴール後、計時されたタイムに目を疑ったファンも多かったのではないか。2分23秒6は従来のオークスレコードを1秒7更新し、キングカメハメハのダービーレコードにコンマ3秒差迫るものだった。レースはマイネエポナがハナを切り、エピセアローム、オメガハートランドらが続く。前半1000メートルは59秒1、次の1ハロンも11秒0と緩むことのない前傾ラップが刻まれた。この流れをジェンティルドンナは後方待機、1番人気ミッドサマーフェアをピッタリとマークした。 直線、ジェンティルドンナは外に持ちだすと、他馬とは次元の違う末脚を繰り出す。上がりは34秒2。ゴールに向けて加速を続け、勝利を確信してからは流す余裕さえあった。5馬身後ろにヴィルシーナ。桜花賞と同じワンツーだった。改修後、タフなコースに生まれ変わった 阪神マイルは強い馬が力通りに好走するようになったが、厳しい展開の今年のオークスも伏兵が割り込む隙はなかったということ。ジェンティルドンナとヴィルシーナの実力差がこれほどあるとは予想していなかったが。
もう一つ、予想できなかったのがミッドサマーフェアの惨敗だ。直線では伸びるところなく馬群に沈み13着。フローラSで完勝したアイスフォーリスが3着なのだから、本来なら上位争いできたはず。スタートして少しかかる場面があり、スタミナを浪費したのは痛かった。フローラSではスローを好位で折り合えただけに意外だったが、前走とはメンタル面が違っていたのではないか。追い切りは坂路4ハロン48秒8という一番時計を叩き出し、さらに前日も「気持ち体が立派に見えた」(小島太師)と坂路に入れて 4ハロン58秒6~12秒1を計測。3歳牝馬の定石から外れた猛稽古は体調の良さを現すものとみられていた。だが、結果論から言えば、 同馬は調教で燃え尽き、本番は抜け殻になっていた。追い切りのラップは中間2、3ハロン目がそれぞれ11秒6、終いは失速して12秒5。初めての2400メートルに挑むには似つかわしくないパターンであり、ファンの側も疑問を持つべきだった。私自身、ダーレーのクラシック制覇を楽しみにするところが大きく、冷静な判断ができなかった。
ジェンティルドンナは桜花賞後、ノーザンファームしがらきに放牧されていた。4月19日の帰厩後も石坂師はオーナーサイドと二輪三脚で最終調整を進めたはずだ。社台グループでもノーザンファームの躍進は凄まじい。今月、私はノーザンファーム早来、空港を見学してきたが、広大な放牧地や800メートルの屋内坂路など育成環境の素晴らしさに舌を巻いた。しかし、それ以上に施設を使いこなす、個々のスタッフの技術や意識の高さが快進撃を支えているのだと考えさせられる部分が多々あった。 日々変わる馬の状態は跨った者しか分からない。どれほど負担をかけるのか、緩めるのか。人を信頼させ物怖じしない性格にするには何が必要か。レースでは数センチの差が明暗分かつからこそ、細部を大切にする者が勝負を制す。オーナーブリーダーがトレセンを凌ぐ施設を構え、外厩が調整の核となった現在、牧場の技術、意識の差が成績に直結する傾向は強まるばかりだ。 桜より進化したジェンティルドンナの圧勝劇は、ノーザンファームの総合的マネジメント力の勝利だった。日本ではまだダーレーより何日もの日の長があったということだろう。
2着ヴィルシーナもノーザンファームの生産馬。距離伸びればジェンティルドンナと逆転できると2番人気に推されたが、道中から手応えはいま一歩だった。それでも連対を確保したのだから立派なもの。3着アイスフォーリスは内を突いて良く伸びた。4着アイムユアーズは前々で競馬をしながらしぶとく残った。マイルのほうが適性があるのは明らかで、短距離路線では大いに活躍が見込める。ところでレース後、残念なことがあった。ミッドサマーフェアの調教を担当していた小島良太助手のブログとツイッターが休止してしまったのだ。 一部の心ないコメントに嫌気が差したよう。週刊ギャロップなどでも連載を持つ人気ホースマンの声が聞けなくなるのは惜しい。ブログでは「クラシックで1番人気に支持される馬に出会えたことが何より嬉しい」とミッドサマーフェアへの期待の大きさが綴られていた。オークスの結果はショックだろうが、この敗戦を糧に秋華賞での巻き返しへ向けて頑張ってほしい。社台グループを先頭にして現場のホースマンたちが切磋琢磨することで、日本競馬のレベルはさらに上がっていくはずだ。
*ミッドサマーフェアはレース中に左前繋靱帯炎を発症していたことが判明した。全治は未定。
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