2012年5月22日火曜日

ひょっとすると

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オークス

2012年05月21日(月)18時00分
注目数:20人
 ひょっとすると、2400mは適距離ではないのではないか。桜花賞が最近10年間でもっとも遅い時計の決着だったこともあり、快勝した1600mよりさらに支持率の下がったジェンティルドンナの、ケタ違いの2冠達成だった。

 勝ち時計の2分23秒6は、これまでの記録を一気に1秒7も塗り替えるオークスレコードである。これは父ディープインパクトの持つ日本ダービーの最速記録(キングカメハメハと並ぶタイレコード)と、わずか0秒3差。高速の芝コンディションを考慮してさえ破格である。2着ヴィルシーナ(父ディープインパクト)につけた5馬身差は、奇しくもディープインパクト(父サンデーサイレンス)が、2着インティライミ(父方祖父がサンデーサイレンス)につけた5馬身差とまったく同じだった。

 パドックで歩く姿や、調教でみせるフットワークは、必ずしもそう光っているわけではない。体つきも他のライバルと比較して、とくに目立つものではない。どこが違うのだろうと思わせるところまで、父と同じである。ところが、全力疾走に入って坂上から抜け出したジェンティルドンナは、突然、ひと回りも2回りも大きく見せる馬体に変身し、ストライドまで違っていた。ちょっと突っ張りながらの走法ではあるが、独走劇を演じたディープインパクトの日本ダービーとそっくりだったのである。この馬だけ他馬とは1秒以上も異なる上がり34秒2だった。

 抜け出したアイムユアーズと、その内にいたヴィルシーナを半馬身だけ交わした桜花賞は、当時人気のジョワドヴィーヴル(父ディープインパクト)を逆転した快勝ではあるが、公平にいってそれほど光ってはいなかった。だから今回、別路線のミッドサマーフェア、さらには桜花賞で下したヴィルシーナよりはるかに低い3番人気の支持にとどまった。ちょっとひ弱さのある4歳ドナウブルーの全妹であり、母も祖母も短距離に良績が集中するだけでなく、短距離タイプの多いファミリー全体のトーンがスピード色を強く感じさせていたから、仕方のないことだった。しかし、伸び伸び走れる東京コースで、マイルから初の2400mに挑戦したジェンティルドンナは、牡牝の差を考慮すると、まさにディープインパクトそのものだったから驚く。

 テン乗りになった川田将雅騎手。すぐ前に人気のミッドサマーフェア、ヴィルシーナがいる展開も理想的だったが、2冠を狙う桜花賞馬へのピンチヒッターは決して気楽な立場ではない。人気の2頭を射程に入れつつ、その2頭の動きを量るようにスパートして鮮やかに差し切ったから、これは痛快。会心の東京での初GI制覇である。

 現3歳、4歳の2世代の活躍だけで、キングカメハメハを抜いて総合種牡馬成績トップに躍り出たディープインパクトは、どのトップサイアーの初期にもみられる傾向とはいえ、マルセリーナ、リアルインパクト…など、どちらかといえばスピード色を前面に出す産駒の活躍が多かった。でも、このジェンティルドンナの2400m独走が示した未来展望はすごい。この日、京都の2400m(1600万下)でも、これまで人気のわりに詰めの甘さを感じさせていたダコールが、得意の京都外回りの軽い馬場とはいえ、一変の強い勝ち方で脱皮してみせた(2分24秒0。上がり33秒2)。フランスでの活躍馬も合わせ、種牡馬ディープインパクトの評価またまた限りなく上昇中である。

 2着ヴィルシーナは、多頭数の馬群の中を気にしたか、それともスローの多かったこれまでのレースとは一変の厳しい流れを気にしたか、鞍上の内田博幸騎手は最初の2コーナーを回るあたりから、早くも気合を入れながらの追走だった。3~4コーナーの手ごたえからすると、そのまま馬群に沈むのではないかと思えるほどだったが、直線、思い直すように伸びての2着は立派なものである。前の2頭とは離れていたとはいえ、「1分11秒0-1分12秒6」の厳しい流れを、勝負どころからは追い通しの手ごたえ。それでも一度は先頭に立つかのように、従来のレコードを0秒9も上回る2分24秒4。ジェンティルドンナが強すぎた。ヴィルシーナにとっては精も根も尽きはてる激走だったから、このあとが心配なほどである。

 最終的に1番人気になったミッドサマーフェア(父タニノギムレット)は、ふっくら見せたと同時に、急に寸詰まりの体型にも映った。道中の行きっぷりなど、すぐ前にいたヴィルシーナよりずっと楽にみえたが、直線に向くと急に手ごたえを失い、最後は失速の13着。追い切り快走のあと、念には念を入れた前日追い(軽いものだが時計になった)が良くなかったのか、若い牝馬ゆえ、ちょっとしたことが思わぬ体調の変化につながったのか、みんな首をかしげたくなるような失速だった。

 人びとの期待を上回るほどの大レコードでの勝者もいれば、同時に、みんなの期待に応えられずきわめて残念な敗戦に終わる馬もまた、必ず出現する。これだけは仕方がない。3歳牝馬の、東京2400mのオークスだからこその歴史そのものである。

 速い流れに巻き込まれることなく、いつもより少し下げたレース運びで3着に押し上げたアイスフォーリス。好位追走から懸命に粘り込みを図ったアイムユアーズは、ほぼ力を出し切っての好走だった。勝ったジェンティルドンナに次ぐ上がり35秒2で伸びかかったハナズゴール(父オレハマッテルゼ)も、予定通りにはいかなかったローテーションを考えるなら、2分24秒8で乗り切っての7着は納得だろう。

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