まずは、直線で岩田のジェンティルドンナが外側に斜行して、池添のオルフェーヴルと接触した件について。岩田が2日間の騎乗停止処分を受けただけで、着順の変更には至らないという裁定だったけど、僕に言わせると、岩田からしてみれば“してやったり”、池添からすれば“やられて悔しい”といったところかな。

オルフェーヴルは直線で内に寄って行っているよね。内にモタれていたという感じはなかったから、池添が内に寄せて行ってジェンティルドンナの進路を閉めにかかっていたということ。どうせ閉めるのなら、もうワンテンポ、もう一完歩でも早く内に寄せていたら、ジェンティルドンナの進路もうまく塞げていただろうし、ぶつけられずに済んだと思う。内に寄せるタイミングが微妙に遅れたことで、1頭分、抜け出せるスペースができてしまったからね。

ただ、何度もオルフェーヴルにぶつけに行った岩田の行為は、僕個人としてもあまりいい印象を受けないな。競馬はスポーツではなく勝負事だから、勝つために相手の邪魔をする(もちろん進路妨害にならない程度に)ことはあって当然だと思うんだ。でも、あそこまでぶつけられたらバランスが崩れて走りに大きく影響するもの。今回にしても、オルフェーヴルはぶつけられたせいで手前を替えているんだからね。

むしろ、ぶつけた相手がオルフェーヴルだったからこそ、ジェンティルドンナは降着にならずに済んだとも言える。並の馬だったら、あれだけぶつけられたら完全にバランスを崩していたはず。そうなれば完全にアウトだよね。それから、池添が手綱を引っ張ったり立ち上がったりして、不利を受けたのをアピールしていたら結果は違っていたかもしれない。誰とは言わないけど、ちょっとした不利でも大げさに立ち上がってみたり、手綱を引っ張ったりするような乗り役は実際にいる。あそこで一旦手綱を引いて、そこから追ったとしても3着のルーラーシップとは差があったから、余裕で2着だっただろう。それで岩田がアウトなら、繰り上がりで1着でしょ。池添にそういうズルさがあったなら…とも思うけどね。

現在の降着のルールは「加害馬が被害馬の競走能力に重大な影響を与えたと裁決委員が判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着」というもの。オルフェーヴルは重大な影響を受けたし、あの不利がなければオルフェーヴルが勝っていたと僕は思う。それでも今回、ジェンティルドンナは降着にならなかった。来年からは「走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたと裁決委員が判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着」という基準に変わるから、余計に裁決が難しくなるだろうね。

新しい降着のルールについては、読者の方から質問をいただいているので、日を改めて詳しく書きたいと思う。

話がちょっと…いや、かなり脱線したね。通常のレース回顧に戻ろうか。

ジェンティルドンナは直線の斜行の件はさておき、道中は実にうまい競馬ができていたね。4コーナーまでは完璧に運べていたよ。テンから押して行けば掛かりやすいものだけど、「掛かったら掛かったで仕方がない」と腹を括れたから、あれだけ前に付けられた。なおかつインコースに入れてロスなく乗れていたからね。一瞬の切れ味ではオルフェーヴルには敵わないと思うし、同じような位置で競馬をしていたら苦しい。今回勝つにはこの競馬しかなかっただろう。

オルフェーヴルは、直線であれだけぶつけられても2着に来るんだから、改めてすごい馬だと思う。それに、3コーナーで後ろから3~4番手にいたのに、4コーナーでは一気に2~3番手。あれだけ早く動いて、直線で二の脚を使うんだから大したもの。もう3~4完歩でも遅らせて動いていれば、楽に勝っていただろうね。ただ、ブログにも書いた通り、調教の動きには迫力がなかったし、実戦でも手応えの割に追ってからの反応があまり良くなかったからね。凱旋門賞の時のような、グンっていう感じの反応はなかったでしょう?長く脚は使っていても、この馬本来の伸びじゃない。帰国初戦で状態面もまだ本当ではなかったと僕は思うんだ。本調子であれば、直線で不利を受けたとしても、3コーナーから一気に動く競馬をしてもアッサリ勝ったんじゃないかな。

ルーラーシップは前走の天皇賞(秋)に続いてスタートで出遅れ。終いはいい脚を使えても、切れる脚は使えない。オルフェーヴルとは違ったタイプだから、位置取りを悪くしたのが何より痛かったね。出遅れなければいい位置に付けられただろうし、また違った競馬ができていたんじゃないかな。ただ、最近は出遅れが癖になっているみたいだから、こればかりはどうしようもない。「出遅れたら出遅れたで仕方がない」と、開き直って競馬をするしかないだろうね。

ダークシャドウも位置取りが後ろ過ぎた感じかな。ルーラーシップと同じでそれほど切れる脚を使える馬ではないから、もう少しで競馬ができれば良かったんだけどね。ただ、1~2コーナーで外から他馬に来られて動くに動けなかったんだろうし、こればかりは仕方がないんじゃないかな。苦しい位置取りになりながらも終いは伸びているから、2400mの距離は問題ないと思うよ。

フェノーメノは、いつもほどのスタートは切れなかったけど、二の脚で好位に付けられたし、道中もスムーズな競馬ができていたね。掛かる馬ではないから、早め早めに動いて粘り込む競馬も合っている。その反面、追って切れる脚を使えないし、GⅠで勝つとなるともうワンパンチ足りない感も否めないから…。もっとジックリ構える競馬ならまた違った走りができるのかもしれないけど、これまでが正攻法でソコソコ結果を出している。大舞台でいきなり乗り方を変えるのは勇気が要るし、なかなか難しいのかもしれないね。

トーセンジョーダンは先行して、最後までしぶとく粘って見せ場を作ったね。GⅠで後ろから行って勝負になるほどの切れ味はないから、思い切って前に行ったのが良かったと思う。このブログでも書いたように、ハッキリ言って体調は良くなかった。それでいてこれだけ走るんだから、伊達にGⅠを勝っていないね。ここを使ってもっと良くなるようなら、次の有馬記念では面白い存在になるんじゃないかな。

エイシンフラッシュは先行していたんだけど、3コーナーからオルフェーヴルが動いた時に他馬も動いたことで行き場がなくなってしまった。それでも、直線に向いてからも大して伸びていなかったから、正攻法の競馬では2400mは長いんだろう。同じ2400mのダービーを勝っているけど、その時は3歳で周りの馬もまだ力が付き切っていなかったからね。古馬のGⅠともなると、前々で運んで、なおかつ終いもうひと伸びするぐらいじゃないと苦しい。やっぱりこの馬は2000mぐらいが一番合っていると思うよ。

ソレミアは先行してジッとしていたんだけど、終いはサッパリ伸びなかったなぁ。調教では柔らかい走りをしていたし、日本の硬い馬場も合うと思ったんだけど…。走り慣れている海外の柔らかい馬場の方が合っているんだろうね。

ローズキングダムは中団からの競馬。道中はオルフェーヴルより前に付けて、3コーナーから動いたオルフェの後を追うように動いている。そこまでは完璧だったんだけど、4コーナーではもう手応えにお釣りがなかったんだ。この馬もエイシンフラッシュと同じで、2400mは長いのかもしれないね。