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審議の結果を待つ間、関係者や報道陣でごった返す検量室前で、ノーザンファーム代表の吉田勝己氏は「これが失格になったら競馬にならないよ」とつぶやきました。とげとげしさはなく、表情はあくまでも柔和で、笑みを含んだぼやき声でした。勝負なんだからあそこで引くわけにはいかないだろう、と言いたげな表情でした。
検量室のなかをガラス越しに見守っていると、16時過ぎにジェンティルドンナの石坂正調教師が傍らの関係者とガッチリ握手。その時点でセーフ判定が出たと分かりました。報道陣の前に出てきた岩田康誠騎手は、まるで先生に怒られたあとの生徒のように意気消沈した様子で、とても勝利騎手インタビューには見えません。「初めて彼女の本気を見せてくれた」という一言が印象的でした。
ジェンティルドンナの勝因は、岩田騎手が積極的にポジションを取りに行ったこと。ペースはさほど速くなく、しかも内側が伸びる馬場コンディションだったので、インの3番手はこれ以上ない位置取りでした。最後の直線でオルフェーヴルとの一騎打ちとなった際、ジェンティルドンナが十分な余力を残していたのは、このポジショニングによるところが大きいでしょう。オルフェーヴルは、ジェンティルドンナに並びかけるまでに、大外をマクって追い上げる必要がありました。この差は大きいと思います。
予想は◎○△で馬単1580円、3連単5550円的中。予想文を転載します。
「◎ジェンティルドンナは『ディープインパクト×ベルトリーニ』という組み合わせ。ダンジグ系のパワーと持続力、父ディープインパクトの柔らかさと瞬発力が融合した傑作牝馬だ。母ドナブリーニはイギリスのスプリントG1の勝ち馬で、全姉ドナウブルーはマイル重賞を2勝している。やや胴が詰まったコンパクトな体形の姉に比べ、本馬はゆったりした造りで身体もひと回り大きい。強力な後肢の蹴りが伸びのあるストライドを生み出しており、直線の長いコースでは確実に伸びてくる。オークスがベストパフォーマンスであることに異論はないだろう。当時は芝が短く時計の出やすいコンディションだったとはいえ、ダービーレコードにコンマ3秒差と迫る2分23秒6のオークスレコードで優勝した。春からさらに馬体が成長しており、しかも53kgという裸同然の斤量。さらにパフォーマンスを上げてくるだろう。同世代の牡馬に引けを取らないだけでなく、古馬一線級と比べても見劣りしない。前半はスローペースで流れ、残り4ハロンのロングスパート戦になると予想されるので、位置取りが勝負の明暗を分けると思われる。前に付けた馬が有利だ。中団より前で流れに乗り、先に抜け出す競馬ができれば、後方から追い上げる怪物を封じることができるだろう。」
これでジェンティルドンナが年度代表馬に選出されることはまず間違いなく、ディープインパクトのリーディングサイアーも確定的でしょう。
今回を含めて日本で調教された3歳牝馬はジャパンCに計11頭出走してきましたが、勝ったのは初めてです。
84年 ダイアナソロン 14着
89年 ロジータ 15着
96年 ファビラスラフイン 2着
96年 ヒシナタリー 7着
99年 ウメノファイバー 12着
99年 スティンガー 14着
00年 シルクプリマドンナ 16着
06年 フサイチパンドラ 5着
07年 ウオッカ 4着
09年 レッドディザイア 3着
12年 ジェンティルドンナ 1着
84年のダイアナソロンから00年のシルクプリマドンナまでは、2着と健闘したファビラスラフインを除き、ほとんど勝負になっていません。しかし、06年から潮目が変わり、フサイチパンドラ、ウオッカ、レッドディザイアといずれも掲示板に載っています。そしてついにジェンティルドンナが優勝を果たしました。外国招待馬を含めると、82年のオールアロング(All Along)と91年のマジックナイトが2着となっています。
たとえば、フランスの凱旋門賞では Danedream や Zarkava をはじめ、3歳牝馬の勝利は珍しくありません。負担重量の設定が適切であれば、3歳牝馬だからといって牡馬を含めた最強クラスに通用しないということはないと思います。同世代の牡馬と2kg差、古馬牡馬と4kg差の53kgなら十分でしょう。ハイレベルなパフォーマンスを披露してきた3歳牝馬は、これからもジャパンCで上位争いをするはずです。
2着に敗れたオルフェーヴルは、ジェンティルドンナのような自在性がなく、その点を岩田騎手に突かれてやられてしまいました。パドックの様子は、良くいえば落ち着いている、悪くいえば覇気がない感じで、いずれにしろ絶好調時には足りないように映りました。にもかかわらず、ジェンティルドンナに比べてロスの多い競馬でハナ差勝負に持ち込んだわけですから、基礎能力はずば抜けています。
池添騎手の乗り方は悪くなかったと思います。無謀な直線一気ではなく、最終コーナーでは好位に進出していました。実力は断然ながら今回に限っては負ける可能性がある、というのが個人的な見立てであり、オルフェーヴル自身は精一杯の力を発揮してよく頑張りました。不可解な凡走ではなく、能力が劣ったわけでもないと思います。
ジェンティルドンナが降着を免れたのは、オルフェーヴルがトーセンジョーダンを交わして2番手に上がったあと、まっすぐではなく若干内側に寄っていったため、岩田騎手に不可抗力という弁明の余地が生じたからではないかと思います。
ジェンティルドンナは、ジャパンCの表彰式が終わると、ウイナーズサークルから伸びるスロープを下って行きました。そして、地上の喧騒とは別世界の、薄暗く人気のない地下馬道の一隅で、円を描くようにずっと曳かれていました。牝馬三冠に加え、怪物を倒してジャパンCを制覇するという歴史的偉業を成し遂げた女の子は、きびきびと軽やかに、ただ黙々と、息も乱さず涼しげな表情で歩いていました。数十年後、ジェンティルドンナの血はどこまで拡がっているのだろうか……と、想像せずにはいられませんでした。
歴史的名勝負の余韻を胸に、競馬が終わったあとは新宿に移動し、魚鮮水産という店で望田潤さんを含め昔の同僚たちと飲み会。遅くまで楽しい時間を過ごしました。ふらっと入ったチェーン居酒屋ですがなかなか美味しかったです。
検量室のなかをガラス越しに見守っていると、16時過ぎにジェンティルドンナの石坂正調教師が傍らの関係者とガッチリ握手。その時点でセーフ判定が出たと分かりました。報道陣の前に出てきた岩田康誠騎手は、まるで先生に怒られたあとの生徒のように意気消沈した様子で、とても勝利騎手インタビューには見えません。「初めて彼女の本気を見せてくれた」という一言が印象的でした。
ジェンティルドンナの勝因は、岩田騎手が積極的にポジションを取りに行ったこと。ペースはさほど速くなく、しかも内側が伸びる馬場コンディションだったので、インの3番手はこれ以上ない位置取りでした。最後の直線でオルフェーヴルとの一騎打ちとなった際、ジェンティルドンナが十分な余力を残していたのは、このポジショニングによるところが大きいでしょう。オルフェーヴルは、ジェンティルドンナに並びかけるまでに、大外をマクって追い上げる必要がありました。この差は大きいと思います。
予想は◎○△で馬単1580円、3連単5550円的中。予想文を転載します。
「◎ジェンティルドンナは『ディープインパクト×ベルトリーニ』という組み合わせ。ダンジグ系のパワーと持続力、父ディープインパクトの柔らかさと瞬発力が融合した傑作牝馬だ。母ドナブリーニはイギリスのスプリントG1の勝ち馬で、全姉ドナウブルーはマイル重賞を2勝している。やや胴が詰まったコンパクトな体形の姉に比べ、本馬はゆったりした造りで身体もひと回り大きい。強力な後肢の蹴りが伸びのあるストライドを生み出しており、直線の長いコースでは確実に伸びてくる。オークスがベストパフォーマンスであることに異論はないだろう。当時は芝が短く時計の出やすいコンディションだったとはいえ、ダービーレコードにコンマ3秒差と迫る2分23秒6のオークスレコードで優勝した。春からさらに馬体が成長しており、しかも53kgという裸同然の斤量。さらにパフォーマンスを上げてくるだろう。同世代の牡馬に引けを取らないだけでなく、古馬一線級と比べても見劣りしない。前半はスローペースで流れ、残り4ハロンのロングスパート戦になると予想されるので、位置取りが勝負の明暗を分けると思われる。前に付けた馬が有利だ。中団より前で流れに乗り、先に抜け出す競馬ができれば、後方から追い上げる怪物を封じることができるだろう。」
これでジェンティルドンナが年度代表馬に選出されることはまず間違いなく、ディープインパクトのリーディングサイアーも確定的でしょう。
今回を含めて日本で調教された3歳牝馬はジャパンCに計11頭出走してきましたが、勝ったのは初めてです。
84年 ダイアナソロン 14着
89年 ロジータ 15着
96年 ファビラスラフイン 2着
96年 ヒシナタリー 7着
99年 ウメノファイバー 12着
99年 スティンガー 14着
00年 シルクプリマドンナ 16着
06年 フサイチパンドラ 5着
07年 ウオッカ 4着
09年 レッドディザイア 3着
12年 ジェンティルドンナ 1着
84年のダイアナソロンから00年のシルクプリマドンナまでは、2着と健闘したファビラスラフインを除き、ほとんど勝負になっていません。しかし、06年から潮目が変わり、フサイチパンドラ、ウオッカ、レッドディザイアといずれも掲示板に載っています。そしてついにジェンティルドンナが優勝を果たしました。外国招待馬を含めると、82年のオールアロング(All Along)と91年のマジックナイトが2着となっています。
たとえば、フランスの凱旋門賞では Danedream や Zarkava をはじめ、3歳牝馬の勝利は珍しくありません。負担重量の設定が適切であれば、3歳牝馬だからといって牡馬を含めた最強クラスに通用しないということはないと思います。同世代の牡馬と2kg差、古馬牡馬と4kg差の53kgなら十分でしょう。ハイレベルなパフォーマンスを披露してきた3歳牝馬は、これからもジャパンCで上位争いをするはずです。
2着に敗れたオルフェーヴルは、ジェンティルドンナのような自在性がなく、その点を岩田騎手に突かれてやられてしまいました。パドックの様子は、良くいえば落ち着いている、悪くいえば覇気がない感じで、いずれにしろ絶好調時には足りないように映りました。にもかかわらず、ジェンティルドンナに比べてロスの多い競馬でハナ差勝負に持ち込んだわけですから、基礎能力はずば抜けています。
池添騎手の乗り方は悪くなかったと思います。無謀な直線一気ではなく、最終コーナーでは好位に進出していました。実力は断然ながら今回に限っては負ける可能性がある、というのが個人的な見立てであり、オルフェーヴル自身は精一杯の力を発揮してよく頑張りました。不可解な凡走ではなく、能力が劣ったわけでもないと思います。
ジェンティルドンナが降着を免れたのは、オルフェーヴルがトーセンジョーダンを交わして2番手に上がったあと、まっすぐではなく若干内側に寄っていったため、岩田騎手に不可抗力という弁明の余地が生じたからではないかと思います。
ジェンティルドンナは、ジャパンCの表彰式が終わると、ウイナーズサークルから伸びるスロープを下って行きました。そして、地上の喧騒とは別世界の、薄暗く人気のない地下馬道の一隅で、円を描くようにずっと曳かれていました。牝馬三冠に加え、怪物を倒してジャパンCを制覇するという歴史的偉業を成し遂げた女の子は、きびきびと軽やかに、ただ黙々と、息も乱さず涼しげな表情で歩いていました。数十年後、ジェンティルドンナの血はどこまで拡がっているのだろうか……と、想像せずにはいられませんでした。
歴史的名勝負の余韻を胸に、競馬が終わったあとは新宿に移動し、魚鮮水産という店で望田潤さんを含め昔の同僚たちと飲み会。遅くまで楽しい時間を過ごしました。ふらっと入ったチェーン居酒屋ですがなかなか美味しかったです。
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