女王が抜群の動きを見せた。ジェンティルドンナは岩田騎手を背にシャープな伸びを見せて態勢を整えた=滋賀県栗東トレーニングセンター (撮影・林俊志)
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モノが違う。見る者にそう思わせるダイナミックなフォームでジェンティルドンナが坂路を豪快に駆け上がった。牡馬をもしのぐパフォーマンスで春の2冠を制した世代最強の女王が、史上4頭目の牝馬3冠へ。戴冠の準備は万全だ。
「無理しないでこの時計やからね。余裕の走りやったね」
最終調整を終えて、確かな手応えを感じ取った岩田康誠騎手の表情が柔らかくなった。午前6時の坂路、岩田を背にしたジェンティルドンナが、周りの馬と明らかに違う大きなフットワークを見せる。鞍上が軽くゴーサインを出しただけで推進力がグングン増していく。4ハロン53秒7の数字以上に、他馬を威圧する走りとオーラが女王のプライドを感じさせた。
「ラスト1ハロン12秒1だったけど、まだまだ伸びるなと思わせる走りだった。前走を使ってさらに良くなっているね。まあ、まずは何事もなく追い切りが終わってホッとしていますよ」
見届けた石坂正調教師も満足と安堵(あんど)で思わず笑みがこぼれるほど。「体つきが明らかに春と違うし、エッと思うほど落ち着いている。競馬だからやってみないと分からないが、心配はない」とトレーナーは、3冠への自信を一層深めた様子だ。
絶好調であれば同世代に敵はない。その証拠が2冠目のオークスの勝ちタイムだ。過去の3冠牝馬を遙かにしのぐ速いタイムで圧勝しているだけでなく、翌週に同じ舞台で行われたダービーよりも時計は速かった。2着のヴィルシーナを5馬身もちぎった内容からも、同世代の牝馬同士なら能力は一枚も二枚も上だ。
「クラシックをひとつ勝つのも大変なのに2つ勝たせてもらった。ここまできたら3つめもなんとしても勝ちたいし、勝たせていただけると思ってます」
石坂調教師の言葉は、3冠達成の自信が確信に変わったことを感じさせた。勝てるかではなく、どんな勝ち方をするか。ジェンティルドンナの歴史的瞬間まであと2日-。(柴田章利)
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