2014年12月24日水曜日

足跡

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G1特集、統一重賞など特集企画も続々掲載

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有馬記念特集

 史上4頭目の牝馬3冠、史上初のジャパンC連覇、ドバイシーマクラシック制覇など日本競馬史にその名を刻んだジェンティルドンナが有馬記念でラストランを迎える。数々の栄光を日刊スポーツの記事で振り返った。(本文中の人馬の年齢などは記事掲載当時のものです)

デビュー3戦目の牡馬倒し重賞初制覇

ジェンティルドンナ
直線で抜け出したジェンティルドンナ(右)とC・ルメール騎手がシンザン記念を快勝した
<日刊スポーツ賞シンザン記念>◇12年1月8日=京都◇G3◇芝1600メートル◇3歳◇出走15頭
 ディープインパクト産駒のジェンティルドンナ(牝3、石坂)が、デビュー3戦目で重賞初Vを決めた。牝馬がシンザン記念を勝ったのは、99年フサイチエアデール以来、13年ぶりの快挙。クラシックの有力候補に躍り出た。この後は放牧に出され、トライアルを1回使ってから4月8日阪神の桜花賞(G1、芝1600メートル)へ向かう。
 強豪牡馬たちをあっさりなぎ倒した。ジェンティルドンナが牝馬として13年ぶりにシンザン記念を制覇。クラシックへ力強く駒を進めた。
 好スタートを切ると、前半は掛かるそぶりを見せつつ4番手を追走。それでも直線に入ると、ジェンティル1頭だけが違う脚でエンジンを爆発させた。牡馬の間を割りながら、光るような末脚で突き抜ける。着差は1馬身1/4だったが、まだまだ伸びそうな勢いでゴールイン。ルメール騎手は優しくたてがみを撫でて、勝利をたたえた。
 「ベリーグッド。直線に向いてからの脚は素晴らしかったです。すごく能力が高い馬ですね。クラシックへの可能性はかなり高いと思います」。年末も同じ石坂厩舎の馬アダムスピークで、ラジオNIKKEI杯2歳Sを勝利。今年も短期免許を取った初日にいきなり重賞を制した。
 1年前の悔しさを妹が晴らしてくれた。全姉ドナウブルーも厩舎の期待馬で、昨年のシンザン記念に挑戦。1番人気に推されるも5着に敗れ、目標の桜花賞に出ることもかなわなかった。「お姉さんも五分の能力があったけど、気性的に敏感なところがあったからね」と石坂師。1年越しで愛馬がウイナーズサークルへと導いてくれた。
 「なかなか思った通りの競馬はできないものだけど、この馬はあっさりやってくれる。今の時点で(ジェンティルの方が)お姉さんよりも大人かな。道中掛かったのが課題の1つだろうけど、現時点ではすごく(クラシックが)楽しみ」と師は胸を高鳴らせる。過去10年で馬券に絡んだ牝馬2頭(07年2着ダイワスカーレット、昨年3着マルセリーナ)はともに桜花賞馬となった。勝ったジェンティルドンナもきっと・・・。石坂厩舎初のクラシック制覇が、くっきりと視界に入ってきた。【平本果那】

まず1冠!ヴィルシーナとたたき合い制した

ジェンティルドンナ
ゴール前の接戦を抜け出し桜花賞を制するジェンティルドンナ(手前)
<桜花賞>◇12年4月8日=阪神◇G1◇芝1600メートル◇3歳牝◇出走18頭
 2番人気のジェンティルドンナ(石坂)が1分34秒6で差し切り、桜の女王の座を射止めた。石坂正師(61)は1歳上のドナウブルーで手にすることができなかったタイトルを全妹で手にし、クラシック初勝利。岩田康誠騎手(38)も桜花賞初制覇。次走オークス(G1、芝2400メートル、5月20日=東京)で2冠を狙う。桜花賞は昨年のマルセリーナに続くディープインパクト産駒連覇となり、ついに重賞2勝馬が登場。成長力をアピールする結果となった。
 ディープ産駒2頭のたたき合い。アイムユアーズを挟んで内ヴィルシーナと外ジェンティルドンナ。半馬身抜け出したのはディープ産駒で最もグラマラスなジェンティルだ。中団外めから岩田騎手の完璧なエスコートで桜冠を手にした。
 「すごい馬になるかもしれん」。石坂師が自身初のクラシックのタイトルを意識したのは昨年の秋だ。1歳上の全姉ドナウブルーも新馬→白菊賞を連勝したエリートだったが、こちらは繊細な気性からクラシックの季節に歯車が合わず、今年1月の京都牝馬Sでようやく重賞勝利。このドナウと比べても30~40キロも体に恵まれ、精神面でドッシリした妹にかける期待は大きかった。
 「勝てる位置で競馬してくれていたので、差してこれると思っていた」。ジェンティルの長所については「ゲートをスッと出て折り合いもつく。追ったら伸びるのでテン良し、中良し、しまい良しですね」とJRA・G1で7勝目のトレーナーが絶賛の言葉を贈る。
 年明けの日刊スポーツ賞シンザン記念で男馬を相手に重賞初勝利。桜のつぼみはふくらむばかりだったが、チューリップ賞の3週間前に暗雲が立ちこめた。熱発で馬場入りを4~5日控えざるをえなかった。
 同じクラブには2歳女王ジョワドヴィーヴルがおり、僚馬のエピセアロームもいる。クラブからは翌週のフィリーズレビューへの転戦を打診されたが、石坂師は信念を貫いた。本番のために中4週、マイル戦をステップにしたかった。61歳の師は「クラシックを狙えるのはあと9回。好きにさせてください」。できるだけ本番までの間隔をあける用兵はズバリ的中した。
 チューリップ賞前の追い切りで初めてまたがった岩田騎手は「ブエナビスタみたい」と乗り味を絶賛。その能力は本物だった。攻め馬担当の井上助手が「どんな時計でも乗れる」というコントロールのしやすさは2400メートルに延びるオークスでも大きな武器だ。
 師も「精神的に大人びているので距離が延びても対応できそう。今日の内容なら期待を持てる」と、早くもクラシック第2ラウンドを楽しみにする。今週の皐月賞では同じディープ産駒のアダムスピークがスタンバイ。勢いに乗った石坂師とジェンティルドンナという“貴婦人”が府中でも華麗に舞う。【中西典章】

豪快差し切り!コースレコードで2冠達成

ジェンティルドンナ
オークスを制したジェンティルドンナと川田将雅騎手
<オークス>◇12年5月20日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牝◇出走18頭
 やっぱり桜花賞馬は強かった! 3番人気のジェンティルドンナ(石坂)が豪快な差し切り勝ちを決めた。勝ち時計はオークスレコードの2分23秒6という驚異的なもの。5馬身差の圧勝劇で史上13頭目の2冠制覇を達成。主戦岩田騎手の騎乗停止で手綱が回ってきた川田将雅騎手(26)の冷静な手綱さばきも光った。10年アパパネ以来となる史上4頭目の3冠を目指すヒロインがまた誕生した。
 無我夢中だった。残り200メートルを切ってジェンティルドンナはヴィルシーナを抜き去り、独走状態に入った。1馬身、2馬身・・・。差はどんどん広がる。当然、川田騎手はそれに気付いていたが、なお手綱を動かし続けた。「突き放しているのは分かっていたが、追うのをやめられなかった」。勝たせたい一心でゴールへ一直線。勝ち時計は何と2分23秒6のレースレコードだ。ディープインパクトのダービーが2分23秒3だから、馬場状態の違いはあるとはいえ、すごさが分かる。5馬身の差で史上13頭目の2冠馬が誕生した。
 殊勲の川田は顔を高揚させ、ふうっとひと息つき喜びを口にした。「強い馬に乗せていただき、結果を出せてホッとしています」。主戦の岩田騎手の騎乗停止により回ってきたバトン。安堵(あんど)の表情が乗り替わりによる緊張感を想像させた。スタートを五分に出て後方外めに位置。「ヴィルシーナとミッドサマーの2頭を気にしていた。直線はミッドが動いてから追い出そうと思った」。桜花賞馬ながら3番人気の評価を受けたことについて「僕が信頼されていない証しだと思う」と振り返ったが、岩田騎手のアドバイスもあり、冷静な手綱さばきで大役を果たした。桜花賞とオークスを異なる騎手で制したのは、実に52年スウヰイスー以来60年ぶりだ。
 陣営は勝ってかぶとの緒を締めた。ジェンティルは繊細で音に敏感。デビュー当初から調教中に急に横っ跳びするようなことがたびたびあった。そこで、シンザン記念で重賞初制覇を達成した後からメンコを着用。日迫助手は「着けるのをギリギリまで我慢していたが、着けてからだいぶ落ち着いた」と振り返る。能力を高い次元で発揮する術を追求し続けた。今回もスタンド前発走に備え、メンコを二重に。ファンファーレが鳴り終わるとオークス仕様の赤いメンコを外してゲート入りさせた。
 順調にいけば、秋には史上4頭目の牝馬3冠を目指すことになる。「あとは岩田さんに。もし僕が他の馬に乗って参戦していれば全力で負かしにいかなければと思うし、乗っていなければ全力で応援したい」。今週のダービーにはゼロスで挑戦する川田。最高の結果を導き出した鞍上と圧倒的なパフォーマンスを見せたジェンティルドンナの今後から目が離せない。【和田美保】

歴史に名を刻んだ!史上4頭目の牝馬3冠達成

ジェンティルドンナ
ヴィルシーナ(左)とのたたき合いを制して秋華賞に勝ち「牝馬3冠」を達成するジェンティルドンナ
<秋華賞>◇12年10月14日=京都◇G1◇芝2000メートル◇3歳牝◇出走18頭
 快挙だ! 断然人気のジェンティルドンナ(石坂)が鼻差で優勝し、史上4頭目の牝馬3冠の偉業を成し遂げた。今後は流動的だが、ジャパンC(G1、芝2400メートル、11月25日=東京)を舞台に、オルフェーヴルとの3冠馬対決の夢が膨らんできた。絶好調の岩田康誠騎手(38)は昨年のアヴェンチュラに続く秋華賞制覇で、年間G1最多勝記録にあと1と迫った。
 歴史に名を刻んだ。「貴婦人」の頭上には、史上4頭目のトリプルクラウンがきらきらと輝いた。
 手に汗を握った。最後の最後でヴィルシーナとジェンティルドンナの一騎打ち。2頭が並んでゴールした瞬間、淀は大歓声に包まれた。内か? 外か? ざわつくファンをよそに、岩田騎手は勝利を確信していた。1着の枠場に入るなり「ウォー!」と雄たけびを上げ、喜びを爆発。「3冠を取るべくして生まれてきた馬だと思う。馬の潜在能力で勝たせてもらいました。ジェンティルドンナの背中に乗れていて良かった」とパートナーをたたえた。
 約7センチ差の勝利に「ぎりぎり。オレの人生みたい(笑い)。はらはらさせてすみません」と、応援してくれた大勢のファンに謝罪した。最大のライバル、ヴィルシーナがハナを奪い、チェリーメドゥーサがまくって行ったときも、慌てなかった。4角で左ステッキを数発。ギアをトップに入れると、グンと加速した。まだ遊ぶところを見せながらの強烈な末脚だった。
 レース前にアクシデントもあった。馬場入場の際にジェンティルが観客に驚いてしまい落馬。あわや放馬・・・という状況だった。「歴史が変わってしまう。死んでも手綱は離せない」。表彰式が始まる前に痛みに気づいた。右足を捻挫していたのだ。足をひきずって表彰式に参加した。しかしレース中は「痛さを忘れるくらい熱いレースをさせてもらえた」と笑った。この集中力こそ彼の強さだ。
 これで今年JRA・G1で5勝。あと1勝で年間最多記録の6勝に並ぶ。土曜に東京で騎乗した岩田騎手は、その夜に栗東に戻り、秋華賞当日の午前4時には菊花賞の相棒ディープブリランテの調教にまたがり、次の「仕事」に備えていた。ジェンティルを担当する日迫助手は言う。「彼が乗って負けたらしゃーない、というくらい。感心する」。石坂厩舎にも毎日顔を出し「よう来てくれる。勝負に対して、本当に一生懸命」と石坂師からも大きな信頼を得ている。
 加えて向上心も果てしない。「もっと余裕をもってジェンティルを勝たせてあげるジョッキーになりたい。女の子から女性へと、もっとどっしりとできたら世界に通用する名牝になると思う」と、岩田はまだまだ上を見据える。史上4頭目の3冠牝馬、彼女の真の伝説はこれから始まるのかもしれない。【平本果那】

オルフェ倒した!牡牝3冠馬対決のJC制す

ジェンティルドンナ
ジェンティルドンナでジャパンカップを制した岩田康誠騎手(右)は、2着のオルフェーヴル池添謙一騎手に向かってほえる
<ジャパンC>◇12年11月25日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走17頭
 牡牝3冠馬対決にわいたジャパンCは、ジェンティルドンナ(牝3、石坂)がオルフェーヴルとの激闘を鼻差制し、3歳牝馬として初の栄冠を手にした。岩田康誠騎手(38=フリー)はオルフェに馬体をぶつけ、狭いスペースに突っ込む厳しい騎乗を見せ、史上最多に並ぶ年間G1・6勝目。ジェンティルは年度代表馬に大きく前進した。来年、このコンビは海外に飛び出し、日本馬初の凱旋門賞制覇を目指す。
 オルフェーヴルを倒したのは、何と3歳牝馬だった。ゴール前、同じ勝負服の2頭が激しくたたき合う。3冠牝馬のジェンティルドンナとオルフェーヴルだ。体をぶつけ合い、はじかれ、はじき返す。岩田と池添、両騎手のプライドと意地が、文字通りぶつかり合う。絶対に譲らない。先着は許さない。思いは同じだった。寒空に響き渡る11万人の声援。200メートル以上のたたき合いは、3歳牝馬に軍配が上がった。鼻差の勝因は、もはや執念しかない。
 引き揚げてきた岩田は喜びを爆発させることはなく、神妙な面持ちだった。たたき合った際、自分が審議対象になっていることを知っていた。約20分に及ぶ長い審議の末、決着をみるとふうっと息を吐いた。「全てを出せた結果、オルフェに勝てた。もっと僕が上手にエスコートすれば良かったが、オルフェに3歳牝馬が勝ったということは、ジェンティルドンナをほめてやってください」。
 人間で言えば高校を卒業したばかりの女子野球選手が、ダルビッシュの速球を打ち返してスタンドインしたようなもの。岩田自身は2日間の騎乗停止になってしまったが、火花散る長い長い攻防戦にも心が折れなかったパートナーの芯の強さをたたえた。
 内の先行馬が残りやすい馬場状態。世界の強豪や名手がそろうタイトなレースが予想される中、外枠は決して有利とはいえない。岩田の心は決まっていた。「腹をくくって、ある程度の位置につけようという頭はあった」。好スタートを切ると、内ラチ沿いめがけて外から左斜めに進路を取った。道中は2番手。この思い切りの良さがG1年間6勝を生んでいる要因だ。
 「馬を信じる」というこのシンプルな考え方は、昨年のJCであらためて学んだ。「ブエナビスタで勝った時冷静に乗ればうまくいくと教えられた。馬から、私を信じて、って言われた気がした。あれでひと回りもふた回りも成長できた」。1つ前の天皇賞では相棒を信じ切れずに敗れた。あの時の思いが、心に残り、岩田の進化を後押しする。
 レース前から「ブエナビスタやウオッカなどに匹敵するような器だと思う」と話してきた。この勝利がそれを証明し、人馬が凱旋門賞を最大目標に世界へ挑む足掛かりとなった。そして、年度代表馬の可能性も高まった。史上最強の牝馬伝説が幕を開けた。【和田美保】

名手ムーアが史上初のJC連覇に導く

ジェンティルドンナ
直線抜け出したジェンティルドンナ(右)はデニムアンドルビー(左)の追撃をハナ差抑えジャパンカップを連覇した
<ジャパンC>◇2013年11月24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走17頭
 1番人気のジェンティルドンナ(牝4、石坂)が鼻差の激戦を制し、レース史上初の連覇を飾った。初コンビを組んだライアン・ムーア騎手(30=英国)が巧みな騎乗でパートナーをエスコートし、栄光をつかみ取った。勝利にも笑顔ひとつ見せない姿は、まさに仕事人。
 ムーアは願った。馬上で念じた。「粘れ!」。押し切りを狙ったジェンティルドンナに、外からデニムアンドルビーが襲いかかった。内と外。2頭の牝馬が横一線に並ぶ。連覇か? 新星誕生か? 約24センチの鼻差を制したのは、昨年の覇者。「ゴールの瞬間は勝ったと思った。でも、過去の教訓から油断はしなかった」。写真判定の末、電光掲示板に浮かんだのは「7」の数字。33回目にして、連覇は史上初の快挙だ。
 世界トップクラスの技量を、存分に見せつけた。石坂師から受けた「人馬でリラックスして」の指示を守り、スムーズに馬を導くことだけを考えた。1000メートル通過は62秒4。未勝利並みのスローペースにも動じない。向正面でハミを取りかけると、巧みに馬と馬の間に押し込んだ。勝負どころでは馬の気持ちを最優先し、早めのゴーサインも出した。あめとムチを織り交ぜた好騎乗。ノーザンファームの吉田勝己代表も「完璧だった」と絶賛だった。
 大一番を前にしての乗り替わり。石坂師は「勝負の世界ですからね。天皇賞の後、オーナーと協議をして決めました」と内幕を明かす。並の人間なら重圧に押しつぶされる状況下だが、世界を股に掛けて活躍する男には縁がない。騎乗依頼はブリーダーズCのために滞在中の、米国で受けた。日本からの電話がかかってきたのは午前3時。「うれしいとかよりも、早く寝たいと思った」。この太い神経がなければ、世界のトップではいられない。
 歓喜の渦巻く検量室前でも、顔色ひとつ変えなかった。唯一、喜びを表現したのは右手を掲げた小さな敬礼ポーズ。これとて普段のレース後と変わりない。共同会見でも神妙な表情のまま「凱旋門賞はかなり厳しいし、アスコット(キングジョージ)は少しましだろうけど、きつい2400メートルになる」。夢を見る外野の声を冷静に封じた姿は、まさに仕事人だった。【鈴木良一】

ムーアが神騎乗!悲願の「世界制覇」果たした

<ドバイシーマクラシック>◇14年3月29日=メイダン◇G1◇芝2410メートル◇出走13頭
 【ドバイ(UAE)平本果那】すごい牝馬だ。女王ジェンティルドンナ(牝5、石坂)が、29日メイダンのドバイシーマC(G1、芝2410メートル)で悲願の「世界制覇」を果たした。直線で前がつまる不利がありながら、ライアン・ムーア騎手(30)の“神騎乗”に導かれ、鮮やかに差し切った。デューティフリー(G1、芝1800メートル)は福永祐一騎手(37)騎乗のジャスタウェイ(牡5、須貝)が、2着に6馬身1/4差の驚異のレコード(1分45秒52)V。両馬の快挙は世界に衝撃を与えた。
 あかぬなら、あけてみせよう。闘志むき出しに突進した。直線で馬群に包まれたジェンティルドンナ。何とかこじ開けようにも、開かない。ムーア騎手が手綱をさばく。内に入れてまた壁に阻まれると、すかさず外へ。名手の指示に機敏に反応した最強牝馬は、風のように突き抜けた。
 「直線に入ってからとても窮屈になった。うまく外に出すことが出来たし、外に出てからとてもよく伸びてくれたよ」と鞍上は振り返る。「いけいけいけ!」と思わず叫んだ石坂師も「ジェンティルが底力を見せてくれた。私も興奮したよ」。額に汗がにじんだ。
 昨年の2着から1年。「こんなはずじゃ・・・」。昨年、師はお祭りムードのメイダンから、目をそらした。「勝つにふさわしい馬だと思っていた。負けて自分が悔しいというより、ジェンティルがかわいそう。ここ(ドバイ)まで来たのに」。日本までの帰路が、さらに遠く感じた。「(馬の力は)あんなんじゃない。また来年もこなアカン」と心の中で固く誓った。
 雪辱の舞台で、ものすごい競馬をして勝った。「久しぶりにあの根性を見せてくれた。改めてすごい」と石坂師は笑う。思い起こしたのは3歳時、2年前のジャパンCだろう。オルフェーヴルと直線、体をぶつけ合う激しい戦いを制した。その勝負根性を再現した。
 「今年いっぱいだからね」と年内で引退予定。ジャパンC(G1、芝2400メートル、11月30日=東京)で史上初の同一G1・3連覇を狙う意向は明かしている以外は未定。日本にとどまらず、世界の女王となった。次なる戦いはどこなのか。

JC3連覇逃すも有馬でG1・7勝目狙う

<ジャパンC>◇14年11月30日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走18頭
 史上初のJC3連覇は成らなかった。好位のインで運んだジェンティルドンナは4着に敗れた。直線はすんなり前が空き、ビクトリーロードが見えていたが、緩い馬場が加速力を鈍らせた。先に抜け出した勝ち馬には離され、外の馬にもかわされた。ムーア騎手は「昨日の雨が痛かった。下が緩く、どうしても地面をつかみ切れなかった。それと例年のような切れ味勝負でなく、スタミナ勝負の流れになったので」と唇をかむ。馬場と展開。2つの要素が、得意の府中で初めて連対を外す完敗につながった。
 このままで終われない。石坂師は「天皇賞もそうだけど、良馬場とはいえ前日に雨があって苦手の馬場になったから。やっとこさの4着なら引退だったろうけど、このままでは心残りがある」と有馬記念出走の意向を示した。7つ目のG1タイトルをかけ、最後の戦いに挑む。【高木一成】
◆ジェンティルドンナ ▽父 ディープインパクト▽母 ドナブリーニ(ベルトリーニ)▽牝5▽馬主 ㈲サンデーレーシング▽調教師 石坂正(栗東)▽生産者 ノーザンファーム▽戦績 18戦9勝▽馬名の由来 イタリア語で貴婦人

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