2014年12月29日月曜日

手記

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【有馬記念】ジェンティルドンナの石坂調教師手記

2014年12月29日15時0分  スポーツ報知
 ◆第59回有馬記念・G1(28日・芝2500メートル、中山競馬場、良)
 ジェンティルドンナが有馬記念でやってくれました! 「勝ちたい」という気持ちはありましたが、正直に言えば、「無事に」という思いが大きかった。抜け出したゴール前は何を叫んでいたのか―。こんな気持ちで引退式を迎えることができるとは本当に、夢のようです。
 ジェンティルドンナは4歳以降、ずっと勝ち続けてきたわけではありません。「力が落ちた」「右回りでは走らない」。そんな声は聞こえてきていました。こんなもんじゃないと信じていましたが、ファンの声はよく当たりますからね(笑い)。
 今年のジャパンカップで4着に敗れたあと、このまま引退させるのか、有馬記念を使うのか。オーナーは決断を私に任せてくれました。暮れの中山競馬場は馬場が荒れ、リスクがつきまとう。私自身、管理馬を故障させてしまったことがあります。ただ、今年は秋に使っていないぶん、例年より馬場がいい。悩みましたが、悔しい気持ちもあって決めました。
 一方で、自分の身勝手な思い込みで最後にもう一度競馬をさせて申し訳ないという思いがあったのも事実です。しかし、枠順抽選でマー君(田中将大投手)が1番目に引いてくれた時、自分の中で何かが変わりました。馬場良し、枠良し。そして、状態も良し。これは勝負せなアカン、と。ジェンティルドンナの力はこんなもんじゃない。何よりも馬自身がそう思っていたのかもしれません。
 一般的に、3歳で活躍した牝馬が年齢を重ねて活躍し続けるのは難しい。でも、世間に「落ちた」と言われてからが、すごかった。信じること。あきらめないこと。それをジェンティルドンナが教えてくれました。
 お守りやファンレターを送ってくれた方。ファン投票で1票を投じてくれた方。寒い中、引退式を見届けてくれた4万人のファンのみなさん。有り余る心からの声援が背中を押してくれました。
 ヴァーミリアンに続いて厩舎の大黒柱を支えてくれた3年間は、まさに驚きの連続でした。牝馬3冠、ジャパンC連覇、ドバイシーマクラシック制覇。想像以上の走りでしたが、やっぱり一番の思い出は有馬記念です。私の身勝手な思いを通してくれたジェンティルドンナ。長い間、本当にありがとう! お疲れさん。(JRA調教師)

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