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競馬コラム
「勝つための条件がすべて揃った」
という管理調教師の言葉どおり、競馬史に残る名牝が、枠順、スローな流れ、例年より傷みの少ない馬場、好相性の鞍上……など、すべてを味方にして栄冠をつかんだ。
12月28日、11万5878人の観衆を集めて行われた第59回有馬記念を制したのは、これがラストランとなった4番人気のジェンティルドンナ(牝5歳、父ディープインパクト、栗東・石坂正厩舎)だった。
枠順抽選会で最初に選んだ“4番枠”。
ハナを切ったのは戦前の予想どおりヴィルシーナだった。
「遅くもなく、速くもない、ちょうどいいペースだった。そのなかでよく我慢してくれた」と言う川田将雅が乗る2番人気のエピファネイアが2番手。
4番枠から出た戸崎圭太のジェンティルドンナは、エピファネイアを2馬身ほど前に見る3番手につけた。
「位置取りは思いどおりだった。前に壁をつくれず、少し気負うところもあったが、よく我慢して、いいリズムで走ってくれました」と戸崎。この4番枠は、木曜日に行われた枠順抽選会で最初に引く権利を得て、石坂調教師が選んだ絶好枠であった。
ほかの有力馬はというと、1番人気のゴールドシップは中団、3番人気のジャスタウェイは後方3、4番手に控えている。
出走馬16頭がスタンド前を通過し、1コーナーを回って行く。
「最後の切れ味勝負になるから、よかった」
1000m通過は63秒0というスローペース。3レース前に同距離、同コースで行なわれた1000万下のグッドラックハンデキャップのそれが60秒8だから、2秒以上遅い。下級条件の特別レースより10馬身以上後ろにGIホース10頭を含むオープン馬がひしめいていたことになるのだから、かなり特殊な流れだったと言っていい。
ジェンティルドンナの石坂調教師は「最後の切れ味勝負になるから、よかった」とこの流れを歓迎していた。
それに対し、ゴールドシップに騎乗した岩田康誠は、「流れが遅かったので、結果的には、1周目の4コーナーで押し上げていけばよかった」と振り返り、自分の競馬に徹したジャスタウェイの福永祐一も、「流れが向かなかった」と悔しがった。
ジェンティルドンナの末脚は最後まで衰えず。
向正面に入っても先頭はヴィルシーナのままだ。2馬身ほど後ろにエピファネイア、4、5馬身離れた3番手にジェンティルドンナ、その内にトーセンラーがつけ、ラキシス、ワンアンドオンリー、フェノーメノ、トゥザワールド、ラストインパクトとつづく。その外にゴールドシップ、2馬身ほど後ろからマークするようにジャスタウェイが脚を溜めている。
馬群が3コーナーに差しかかるとペースが急激に速くなった。
ヴィルシーナのリードはみるみる縮まり、4コーナーでエピファネイアがかわしにかかる。その外からジェンティルドンナがスパートをかけ、ラキシスも負けじと食い下がり、それらをまくるようにゴールドシップが大外から押し上げてきた。
直線に入ると、内埒沿いからエピファネイアが先頭に立った。そのまま抜け出すかに見えたが、ラスト200m地点でジェンティルドンナが並びかけ、2頭が激しく叩き合う。
ゴールまで10完歩ほどのところでジェンティルドンナがエピファネイアを競り落とし、体ひとつ抜け出した。外からゴールドシップ、内からトゥザワールドが猛然と追い込んでくるが、ジェンティルドンナの末脚は最後まで衰えることがなかった。
オグリキャップ、オルフェーブルらの伝説をなぞる。
勝ちタイムは2分35秒3。先述した第7レースのグッドラックハンデキャップの2分33秒8より1秒5遅かった。
言わずもがなだが、タイムが速かった7レースの勝ち馬が有馬記念に出ていたら勝っていたかというと、お話にならない結果に終わるのが競馬というものだ。不振にあえいでいたオグリキャップが引退レースを勝利で飾り「奇跡のラストラン」として伝説になっている1990年の有馬記念も、同日のグッドラックハンデより遅い勝ち時計で決着した。オグリに騎乗した武豊が「強い馬は強いんです」と言ったように、特殊な流れになっても勝ち切ることができるからこそ名馬なのである。オルフェーヴルが3歳だった2011年の有馬記念も、その日のグッドラックハンデより遅い時計で決着した。「超」のつくスローペースは「我慢を強いられる」という点で、ハイペースとは別種の厳しい流れなのである。
歴史的名牝の血は、どうつながれていくのか……。
この勝利は、ジェンティルドンナにとってGI通算7勝目となった。
今年は、JRA・GIの勝ち馬がすべて異なるという結果になったが、ドバイシーマクラシックを勝っているこの馬が、ジャスタウェイ(ドバイDF、安田記念)と並ぶGI2勝馬となった。年度代表馬のタイトルを、ぐっと引き寄せたと見ていいのではないか。
今年のJRAリーディングジョッキーとなった戸崎は「今年はGIを勝っていなかったので嬉しいです。ジェンティルドンナで初めてレースに出た秋の天皇賞でも、負けはしたものの(2着)、すごく相性がよく感じました。きょうも何の不安もなく、自信を持って臨むことができました」と笑顔で語った。
4分の3馬身差の2着はトゥザワールド、3着はゴールドシップ、4着はジャスタウェイ、5着はエピファネイアだった。
ゴール前の攻防は迫力満点で、「超豪華グランプリ」という前評判に恥じない熱戦だった。
最終レース終了後、スタンド前のコース上でジェンティルドンナの引退式が行われた。
来春から繁殖牝馬となるわけだが、ノーザンファームの吉田勝己代表によると、初年度の配合相手はハービンジャーかキングカメハメハのどちらかになるようだ。
歴史的名牝の血がどうつながれていくか、興味は尽きない。
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