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ジェンティルVに11万人震えた/有馬記念
<有馬記念>◇28日=中山◇G1◇芝2500メートル◇3歳上◇出走16頭
ジェンティルありがとう、そしてさようなら-。G1馬10頭が集結したドリームレースは、ジェンティルドンナ(牝5、石坂)が制した。好位の内から抜け出す盤石の競馬で、父ディープインパクトに並ぶ歴代最多タイのG1・7勝目。通算獲得賞金でもオルフェーヴルを抜き、テイエムオペラオーに次ぐ2位となった。歴史に残る名牝は強烈な記憶と数々の記録を残し、ターフを去る。
外からゴールドシップが迫り、内のエピファネイアが突き放そうとしても、ジェンティルドンナの闘志は衰えなかった。11万人が震えた直線坂下。戸崎は最後まで女王の底力を信じていた。「根性があってしぶとい。ジェンティルなら大丈夫」。紙吹雪舞うスタンドから響く大歓声に押され、さらに脚色が増す。初めて経験する中山の急坂も何のその。残り200メートルで立った先頭の座を守り切った瞬間、戸崎の左手が高々と上がった。
男たちが、泣いていた。確定の赤ランプよりも先に、涙を目に浮かべた井上助手と日迫厩務員が孝行娘に駆け寄った。石坂師は「こんな過酷なレースに使って、馬には申し訳ないことをした。だけど勝ってくれた。本当にすごい馬」と目頭を押さえた。天候不良のため馬場に恵まれなかったジャパンCで4着に敗れ「このままでは終われない」と参戦を決めた。戦前には「ジェンティルは日本の宝。世界の宝」と公言。もう1つ勲章を増やしてあげたかった。結果は父ディープインパクトに並ぶ歴代最多タイのG1・7勝目。戸崎も「馬に助けられました」と最敬礼した。
全てがかみ合った。公開枠順抽選で最初に選択権を獲得し、希望の2枠4番に入った。当初の雨予報もどこかに消え、待望の良馬場で競馬ができた。石坂師には確信があった。「勝つ条件がそろっていた。これで駄目なら馬の力と思っていた」。馬場のいい内側で脚をためて直線へ。その瞬間から、師は我を忘れるほどの大声を張り上げていた。
最強牝馬のまま、母になる。師はかつてジェンティルの強さをこう評した。「体が丈夫で調整も楽。いつも使いたいレースを使うことができる。それがどれだけ大変なことか」。強く健康で、牡馬にも負けなかった母。初年度はハービンジャーかキングカメハメハとの配合が予定されている。
約4万人に見送られた引退式では、まだ走れると言わんばかりに首を上下に振った。最強のまま、惜しまれながら。女王は静かに翼をたたんだ。【松本岳志】
[2014年12月29日9時1分 紙面から]
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