(28日、競馬・有馬記念
 最強牝馬(ひんば)が最後によみがえった。
 残り200メートル、内で粘るエピファネイアを捕らえて先頭に躍り出る。そこからが競り合いに強いジェンティルドンナの真骨頂だ。迫ってくるライバルを抑え込み、自らの引退レースを白星で飾った。
 「こんなはずじゃない」。石坂調教師の執念が実った。3月にアラブ首長国連邦のドバイに遠征してGⅠ制覇を果たした。しかし、その後は宝塚記念天皇賞・秋、ジャパンカップと3連敗。「もう一度、彼女の本来の姿を見てもらいたい」とラストランの有馬記念出走を決めた。
 25日、枠順を決める公開抽選でヤンキース田中将大投手が一番に引いたのがジェンティルドンナのくじだった。最近10年で1~4番の馬が4勝しているように有馬記念は内枠が優勢だ。石坂調教師が迷うことなく選んだ2枠4番の枠順も勝因の一つになった。
 戸崎騎手にとっても貴重な勝ち星になった。地方競馬から移籍2年目で146勝。中央競馬で初の最多勝に輝いた。足りなかったのはGⅠレースでの勝利だった。有馬記念を制してタイトルに花を添えた。「ジェンティルドンナが助けてくれました」
 午後5時、夕闇の中山競馬場でジェンティルドンナの引退式が行われた。レースが終わって1時間以上も経っていたが、4万人のファンが残って名残を惜しんだ。見事な引き際だった。(有吉正徳
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 戸崎騎手 「2度目の騎乗でしたが、乗りやすい馬で心配はしていませんでした。最後を飾ることができてよかった」
 石坂調教師 「現役最後のレースを勝つことができて、うれしいのひとことです。一番印象に残るレースになりました」