天皇賞、1着スピルバーグ(右手前)
【天皇賞・秋(2日、東京競馬場)】“次”につながる2着だった。1番枠から好スタートを切ったジェンティルドンナ(牝5・石坂)=戸崎圭はすぐさまインの3番手をキープ。何度も調教でコンタクトを取っていたとあって、道中の折り合いはピタリ。しかも、ペースは1000メートル通過が60秒7のスロー。絶好の位置取りに加えて流れもおあつらえ向きとまさに勝ちパターンだったのだが……。

 しかし、勝利はすんでのところで手から滑り落ちた。「いい位置で流れに乗れたんだけど、最後の直線で狭くなってしまった。あそこでいいところに出せていれば」と戸崎圭。4コーナーを回って外へ持ち出すタイミングをうかがうが、イスラボニータにブロックされて進路を見つけられない。すぐさま切り替えて最内に突っ込んで伸びてきたのだが、内ラチ沿いの狭いスペースを抜け出すのに手間取ってしまったのは否めない(戸崎圭は十分な間隔がないのに先行馬を追い抜いたため過怠金3万円)。時間的なロスはわずかとはいえ、大外から勢い良く伸びたスピルバーグを脅かすまでの脚はなかった。

 それでも底力は存分に示した。何より宝塚記念の大敗後にささやかれた年齢的な衰えがないことを証明できたのは大きい。「結果は仕方がない。休み明けでもいい状態に仕上がっていたし、最後は狭い所をよく割って出てきたと思う。もちろん、負けたのは悔しいが、ジャパンC(11月30日、東京芝2400メートル)へ向けてという点からすれば、これ以上ないレースでしっかり格好をつけてくれた。マイナスになる材料は何もないからね」。石坂調教師は前を向いて東京競馬場を後にした。次走は最大目標のジャパンC。それも3連覇という偉業がかかっている。残念ながら昨年の雪辱はならなかったが、陣営はこの2着に確かな手応えをつかんだはずだ。