【トレセン発秘話】「スプリンター級のスタート」と評されることがあるという。意外に思われるかもしれないが、ジャパンC(日曜=30日、東京芝2400メートル)で史上初の3連覇を狙うジェンティルドンナのことだ。

 デビュー当初からゲートセンスは抜群だったが、その能力は古馬になって一層磨きがかかり、ゲート内でチャカついた京都記念(6着)を含め、これまで出遅れたことは一度もない。それどころか、今年の天皇賞・秋(2着)や昨年のJCのようにトップスタートを切ることも。ともすれば、スタートが良過ぎることで前に行き過ぎてかかる、目標にされるなど悪い面もないとは限らないが、出遅れて位置取りが悪くなることを考えれば、よっぽどマシ。ジェンティルドンナの持つ才能の一つと言っていい。

 その能力が遺憾なく発揮されたレースがオルフェーヴルを打ち負かした一昨年のJCだ。内しか伸びない馬場で外枠からの発進と不利な状況だったが、早いスタートをきっちり決めたことで、押して出していくこともなく、スッと内の絶好位につけることができた。仮にスタートに難のある馬だったら、あの衝撃的Vがあったかどうか…。

 外国馬が多数出走して流れが速くなるといわれたJCなど、すでに過去の話。実質上、日本の古馬トップを決める一戦で、流れはスロー寄り。レースの上がり3ハロンが34秒前半で決まる瞬発力勝負が過去10年で6度もある。4角10番手以降から差し切った馬はなく、同6番手以内からの勝利が実に8頭を数えるのが近年のJCの実態だ。そんなレースでウイニングポジションとなるのは「好位のイン」。ジェンティルドンナのスタート力は“JCポジション”を確保することを容易にするのだ。

 (栗東の坂路野郎・高岡功)