ジェンティルドンナP
【ジャパンカップ(日曜=30日、東京芝2400メートル):トレセン発秘話拡大版】ジェンティルドンナは史上初の3連覇を達成し、女傑伝説に新たな一ページを刻むことができるのか? 第34回ジャパンCの焦点の一つだ。ジェンティルドンナを見守り続けてきたおなじみ“ジェンティル高岡”こと、高岡功記者が「トレセン発秘話拡大版」でその可能性に迫った――。
「引退目前の牝馬は繁殖馬になる準備をするため競馬で走らなくなる」と言われる。エアグルーヴ、ウオッカ、ブエナビスタ…歴代最強クラスの牝馬をもってしても現役最後のレースを勝利で飾ることはできなかった。
「人間が勝手に当てはめているだけで、実際のところは分からないけどな。ただ、いい状態というのはずっと続くわけではないし、ピークのデキを保ったまま引退する馬なんてめったにいない」
 カワカミプリンセス、テイエムオーシャンなどの名牝を管理してきた西浦調教師の弁だ。デビューから無敗でオークス、秋華賞を制したカワカミプリンセスは、その後1勝もすることなく6歳時のエリザベス女王杯(9着)を最後に引退した。
「カワカミプリンセスは4歳夏に種子骨を骨折したのが響いてしまって…。馬自身に走りたいという気持ちはすごくあったんだけど、それに体がついてこなくなってしまった。逆にテイエムオーシャンの場合は体は素晴らしくできていたのに、レースでは気持ちが続かず諦めてばかりいた」(西浦調教師)
 心・技・体、その全てが揃っていないと競走馬はポテンシャルを維持することはできないし、それをキープしたまま現役を全うするのは難しい。
 年内での引退が決まっているジェンティルドンナはデビューから一線をひた走り、この秋で丸3年…。「心」「体」いずれかに衰えが出て不思議ないが、逆に今になって3歳時をほうふつとさせる“ある変化”が起きているのには驚かされる。
「この秋はとにかく元気がいい。坂路調教ではゴールを過ぎてからもなかなか止まらない時があるくらいだし、帰りの運動でも3歳の時みたいに跳びはねたりすることがある。乗っていて当時の怖さが戻ってきた感じ。やはりこの馬はこういう時の方が走る」とは調教パートナーの井上助手だ。
 デビューからずっとジェンティルドンナを完璧に御してきたこの男が、秋の天皇賞前には初めて軽く馬から落とされたことがあったというのだから、そのヤンチャぶりは「カメラマンが容易に近づけなかった」という3歳時並みだ。
「この前、帰りの運動でまたがったけど、確かに3歳のころの雰囲気が戻ってきた感じ。それに去年に比べて体幹がよりしっかりした。去年の天皇賞は入厩1か月で出走したけど、今年は2か月かけてやってきたからね。(結果は同じ2着でも)その後の反動が少なく、より順調に調整が進められている」(日迫厩務員)
 引退を目前にして、気持ちが繁殖に向かうどころか、より競馬モードに研ぎ澄まされているとは、やはり並の一流馬ではない。
 このジャパンCが引退レースになるのかは未定。今後のプランについてサンデーレーシングの吉田俊介代表は「過去2年、JCの後に有馬記念を使わなかったのは翌年にドバイ遠征予定があったから。来年はドバイに行かないわけですし、余力があれば有馬に行く可能性も出てくるでしょうね」と話す。ただし、今回手綱を取るライアン・ムーアの短期免許が有馬の前週で終了することから、「有馬に使うとなれば、また違う騎手を探さなければいけないし、引退式もいろいろ大変になるかもしれません」。
 有馬まで現役を続行するかどうかにかかわらず、ジェンティルドンナとのコンビで2戦無敗のムーアを迎え、JC3連覇の大偉業に挑戦するここが競走生活のピークになるのは言うまでもない。
 過去3戦全勝の叩き2走目、5戦3勝、2着2回とオール連対の東京コース…導き出される結論は3連覇の歴史的偉業達成と信じている。