2013年3月24日日曜日

内最

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いよいよ3月30日(土)にドバイはメイダン競馬場のシーマクラシックで本年緒戦を迎える、昨年の年度代表馬ジェンティルドンナ(牝4、栗東・石坂厩舎)。前回の更新では検疫直前の雰囲気や輸送日程などについてレポートしたが、今回は国内最終調整での動きと状態、海外遠征で結果を残すためのポイントを、続報として井上泰平調教助手に伺ってきた。

国内最終調整の動きと状態

-:今朝(3/20)の追い切り後に出国検疫なので、通常の馬場入りよりも2時間早い5時過ぎという早い時間に坂路に入られましたね。どんな動きでしたか?

井上泰平調教助手:いつも通り良い動きでした。馬場も良い時に走れますからね。若干、今日は時計の掛かる馬場でしたけれど、朝一番でキレイだったので、そんなに苦にすることもなく、上手くいったと思います。

-:時計的には55秒ぐらいですね?

井:そうですね。55秒ぐらいという指示が出ていたので。ラスト1Fが13秒1です。「 (4Fのラップで)15-14-13-13ぐらいで」という指示だったので。

-:馬場状態もコンディション自体はフラットで、どの馬も走っていない時間帯ですが、月曜日に雨が降っている影響で、ちょっとコンディション的には重い感じでしたか?

井:重い感じでしたね。感触的にはもう少し出ていそうな。


上の写真で正面に一番手前に写るのがケイアイレオーネ。奥にジェンティルドンナの姿が見える

-:今回の帯同馬のカーマインは西浦厩舎のケイアイレオーネと併せて、それを先に行かせて、ジェンティルはその後ろを走ってたという感じですね。

井:そんなに速くもないので。取りあえず併せ馬で先に行ってもらって。カーマインはこの検疫馬房までの帯同なので、ドバイに一緒に遠征する他の2頭とも慣らすよう、後ろに付けさせてもらったり、練習はしていました。

-:その後、坂路の上の角馬場みたいなところに行かれましたね。

井:あそこで上がり運動をしました。いつもの調教パターンとは違います。

-:その違うパターンで調教されて、ジェンティルは戸惑うこともなく?

井:最近、異なる環境に慣れやすくなったのか、普段ならスゴく嫌がると思うんですけれど、今回、検疫に入って、色々なパターンを経験しても、あまり戸惑わなくなっているのは確かだと思います。

初めての滞在競馬はドバイで

-:海外の競馬でいえば、エサなどで日本のモノを使えなかったりなどは想定されていますか?

井:いや、全部持っていくので、いつもと同じエサを向こうでも食べることができます。

-:ああ、そうですか。それが別にルールに引っ掛かるとかは?

井:そういうことはないです。水も全部じゃあないですけれど、幾らかは余分に持っていくので、徐々に……。

-:水も向こうとだいぶ違うんですか?

井:備えつけてあるのがミネラルウォーターと聞いているんですけれどね。

-:じゃあ、フランスに行ったりするほど、水に困ったりすることはないんですか?

井:そうですね。軟水、硬水の水質の違いがあったりしますよね。

-:フランスなんかメチャクチャ硬水で?

井:そうですね。硬水ですからね。

-:ヒルノダムールがフランスに行った時、日本と水質が違い過ぎて、凱旋門賞までに水素水を作る機械が壊れたという話を聞きましたからね。

井:ああ、そうなんですか。


-:あとは向こうの環境に慣れることが大事ですね。

井:輸送をクリアして、向こうの環境に慣れてくれれば。まあ、考え方を変えれば、東京に行ったりする前日の輸送というのがないぶん、慣れたところですぐに競馬ができるので、それも良いのかなと思っているんですけどね。

-:長距離輸送をこなして、あとはドバイの環境にどれだけ慣れるかということですね?

井:そう、慣れるかですね。

-:ジェンティルは滞在競馬の経験はないんですね?

井:そうですね。滞在はしたことがないですね。

-:今までは当日か、前日に輸送して競馬をしていると?

井:そうですね。

-:そこが今までと違うという。

井:逆に良いのかなという気もするんです。当日とか、前日とかに運んでイレ込んでいる状態よりも、慣れた方が良いのかという気はしてますけどね。

-:坂路を走っている時なんですけど、メンコって何種類かお持ちじゃないですか?

井:担当者の日迫さんが色々、その日の気分によって。

-:その日の気分で付け替えているだけであって、効果が違う訳じゃないと?紫っぽいヤツとか色々あったんで、どう使い分けているのかなと思いました。

井:まあ、そうではないですね。色々な柄がありますが。そんなに大した意味はないんです。

パドックでは自然体のジェンティルが理想

-:レースまで10日間となりました。もう、明日、出発ですか?

井:馬は金曜日です。僕が明日の晩ですね。

-:井上さんもけっこう疲れるんじゃないですか?今日も5時の調教が終わって、その後も調教をやっていたら。

井:いや、その代わり、(調教時間帯を大きく2つに分けた)後半は乗ってないんで。

-:じゃあ、ちょっとだけ上がりは早かったですか?

井:まあ、獣医が1時半に来ていたので、午後に出るのも早くなってるんですけどね。

-:井上さんも体調をコントロールして?

井:まあ、僕はしゃべれるし、人間やから、シンドかったら「シンドイ」と言いますから、ハハハ(笑)。今のところ健康状態は良好です。

-:向こうの気温は日本とどれぐらい違うのですか、今の時期?

井:昼間は27度とか30度とか、だいぶ暑いみたいですね。日の出前の涼しいうちに乗ってしまえると思うので。

-:日本馬にとってはその気温差に戸惑うでしょうね。

井:そうでしょうね。でも、すぐに慣れるんじゃないですか、そういうのは。

-:ちょっとコッチが暖かくなってきたから、もっと寒い所に行くよりは?

井:良いですね、気分的には。

-:ファンも特に楽しみにしていると思いますので。

井:そうですね。頑張りたいと思います。

-:今のコンディションとしてはいかがですか?

井:良い調子です。

-:前走のジャパンカップとは比べられないですね。休み明けになりますから。

井:そうですね。なかなか比較は難しいですね。まあ、良い感じだという手応えは感じてます。



-:ちょっと重めに作るというか、輸送の分、余裕を持って作られているという感じですか?

井:どれだけ減るかも分からないですし、向こうでどれだけ戻るかも分からないんで。とりあえず競馬をするというのにあたって、ちゃんと体調を整えるレベルの調教もしたし、体重は今のところ、そんなに減ってないし、キープできているので。しっかりと余裕を残したかと言われれば、そこまでは気にしていないかな……。痩せないようにはしていますよ。

-:馬によっては20キロとか、30キロ減ると聞いたんで。

井:飛行機輸送ですか。まあ、それはやってみないと分からないですね。

-:しかもドバイは体重の発表がないじゃないですか。だから、僕ら日本人は数字を見て、減ったとか増えたとかに慣れていますから、画面でファンが見る時は画面から判断するしかないので。

井:といっても、ドバイは馬券が買えないでしょ?

-:馬券は買えないけれど、これだけの馬ですから。応援するファンは気になると思います。どんな感じでパドックとか返し馬をやっていたら良いですか?

井:パドックもいつもスゴくイレ込んでいるし、そんなに大人しい訳ではなく、落ち着いているとかあんまりなく、けっこうチャカチャカしているので。でも、いつも返し馬に入ってしまうと、そんなにおかしなこともしないで、リラックスしてくれるんです。どうなったら調子が良いか、とかはあまり表しにくい馬ですよね。

-:日本の時と同じようであればいいと?逆に大人し過ぎると心配ですね。

井:あんまり変わらないんじゃないかと思います。

-:日本ではレースが夜中の時間帯ですが、ジェンティルドンナを応援しています。

井:みなさんも是非、応援お願いします。ありがとうございました!

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(取材・写真)高橋章夫

【井上 泰平】Taihei Inoue

大阪府豊中市出身。9歳から乗馬を始め、高校生時代に国体を優勝。必然の流れにより大学では馬術部に入る。卒業後は美浦分場に2年間勤務。アイルランドの研修などを挟んだ後に競馬学校へと進学し、中村均厩舎からトレセン生活をスタート。その後は開業直後の角居勝彦厩舎で調教主任を務め、大久保龍志厩舎では持ち乗りから攻め専に転身。後の名門厩舎の基盤を築く。
32年に渡る馬乗り人生の中で、現在モットーにしていることは「馬との信頼関係を築くこと。分かりあえたかなと思っても、また違うのかなとそれの繰り返し」と。石坂正厩舎の屋台骨を支えるベテラン調教助手。

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