2013年3月18日月曜日

押し

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井上泰平調教助手

押しも押されもせぬ実績と幾度もの名勝負で、昨年の年度代表馬に輝いたジェンティルドンナ(牝4、栗東・石坂厩舎)。今年は陣営が世界を股に掛ける活躍を明言しており、その緒戦となるのが3月30日(土)にメイダン競馬場で行われるドバイシーマクラシック出走だ。今回はその遠征に帯同し、世界制覇の第一歩を共に歩む井上泰平調教助手に、検疫直前の雰囲気や輸送の日程などについて詳しく伺ってきた。

検疫直前のジェンティルドンナについて

-:海外遠征も迫ってまいりましたが、ドバイシーマクラシックに向けて検疫に入るのはいつですか。

井上泰平調教助手:15日の金曜日です。調教後にそのまま入りますね。

-:読者さんは検疫の制度があまり詳しく分からないと思いますので、今までの栗東の調教とどのように変わるのかということを教えてください。

井:調教時間が他の馬と違う時間になるんです。検疫では他馬と接しないということが基本なんです。

-:馬場入りの時間が今だったらトレセンでは7時じゃないですか?

井:それが5時になりますからね。他の馬も含めて、確かそうだったと思います。それで6時には厩舎に帰らないとダメなので。

-:厳密に言ったら、出会うこともありますか?

井:いや、大体みんな、早くても1時間前に来て、その時間に厩舎の検疫所に入ってしまうので、ないですね。

-:担当される日迫さんと乗られる井上さんは体力的にシンドイですね?

井:朝が早くなりますね。帯同馬のカーマインも一緒なので、久保さんという方も一緒に早く出てきて。1頭では調教が上手く進まないので。


重責を担う帯同馬はカーマイン

-:カーマインとジェンティルドンナがずっとペアで?

井:そうですね。ペアで行きます、調教は。カーマインは日本に残りますけれどね。

-:それで15日に入って、20日に最終追い切りをして出国すると。出国は?

井:22日ですね。

-:厳密に言うと、レースの1週間前ぐらいにドバイに入るということですね?

井:30日がレースなので、1週間前ですね。便が金曜日しかないので、前後で言うと15日。22日が最終便ですけど、先生やオーナーがそれを選びました。

-:帰ってきてからというか、今季、牧場に戻ってきてからのコンディションで、何か変わったことがあったら教えてください。

井:順調にリラックスした良い放牧ができたと思いますし、帰ってきても問題なく、順調にメニューをただ、淡々とこなしてきたなという。

-:体的な変化とか、体重的な変化というのは?

井:あまりなかったですよ。ただ、減りにくくはなってましたね。前は入って、減ったりしたんですけれど。

-:それは環境の変化で?

井:はい。それにはちょっとマシに対応できているかなと。精神面での成長もあるのかもしれません。

-:今朝(3/13)の追い切りですが、ジョッキーが乗って?

井:僕が併走馬に乗ってリードをする形でしたね。

-:動き自体はどんな感じでしたか?



井:横の馬に乗っていたのですが、途中から付いていけないなという感じでしたね。シッカリと真っ直ぐに走れたんで、良かったと思います。

-:それだけジェンティルドンナは余裕を持って走れていたと。

井:坂路の上に上がっても高揚することもなく、淡々とノソノソ歩いていたんで、あんまりしんどくはないんだなと。

-:そんなに負荷も掛からずに?

井:掛かっていると思いますけれど、それを見せなかったですね。

-:今日の馬場状態は走った時間帯ですごく上下していたと思うんです。ジェンティルの走っていた時間帯はどれぐらいのコンディションでしたか?

井:開場2、3分後だと思うので、まだ、そんなに悪くもなってなかったですしね。今日は走りやすい馬場でした。

-:先週、先々週ぐらいに比べると大分、走りやすいコンディションだったと。

井:先週は馬場が凍っていたので、ちょっと上滑りするような感じだったんです。それはあまり得意ではありませんね。

-:先週は凍っていて、その時間帯はある程度、時計が掛かって、しばらくしたらダメになって、すごく時計が遅くなるという特殊な状況だったですからね。今日はそういうことはなく。しっかり走りやすい、いわゆる普通の坂路の状態で?

井:近かったですね。

一番の気掛かりは飛行機での超距離輸送

-:牝馬ということもありますし、海外遠征をするにあたって、気に掛けていること、対策というのはどういう風に考えていらっしゃいますか。

井:飛行機輸送が初めてなので、全然未知ですし、どういう態度を示すか。まだ分からないですけれど、それがクリアできれば良いポテンシャルを発揮してくれると思うので、輸送が一番気掛かりなところですね。

-:コレばっかりはやってみないと分からないですからね。

井:ええ、やってみないと分からないですね。

-:飛行機に乗っている時間もかなり長いですからね。飛行機は直行じゃなくて、どこかで1回乗り替えないといけませんか?

井:ソウルの仁川(インチョン)で荷物を降ろすだけ降ろして、そのまま積み替えはないです。貨物なので、色んな荷物が載ってますから。

-:韓国経由で行く訳ですね。何時間ぐらい飛んでいるんですか?

井:16時間やったかな。仁川に滞在している時間も合わせてかもわからない。2時40分発のドバイが22時45分着。時差がマイナス6時間なので、16時間前後。

-:結構、馬にとったら負担が大きいですよね。

井:まあ、そうですよね。リラックスしろ、と言っても、無理だと思うので。


-:減る分はしょうがないと思って、最初から作っていくという感じですか?

井:実際、どれだけ減るかも分からないですからね。

-:着いてから1週間強の時間で?

井:回復させる。まあ、なるべく輸送もストレスが掛からないように、担当者の方も工夫をされていますので。

-:分かりました。20日に最終追い切りの後、お話を伺うことは可能でしょうか?

井:大丈夫です。僕は21日の木曜日に出発しちゃうので、その日か次の日の昼までコッチにいますので。

-:その時にまた、最終追い切りの手応えというのを聞かせてください。それでは、よろしくお願いします。

井:はい、分かりました。よろしくお願いします。

(取材・写真)高橋章夫

【井上 泰平】Taihei Inoue

大阪府豊中市出身。9歳から乗馬を始め、高校生時代に国体を優勝。必然の流れにより大学では馬術部に入る。卒業後は美浦分場に2年間勤務。アイルランドの研修などを挟んだ後に競馬学校へと進学し、中村均厩舎からトレセン生活をスタート。その後は開業直後の角居勝彦厩舎で調教主任を務め、大久保龍志厩舎では持ち乗りから攻め専に転身。後の名門厩舎の基盤を築く。
32年に渡る馬乗り人生の中で、現在モットーにしていることは「馬との信頼関係を築くこと。分かりあえたかなと思っても、また違うのかなとそれの繰り返し」と。石坂正厩舎の屋台骨を支えるベテラン調教助手。

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