2013年11月25日月曜日

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“完ぺき”ではなく“妥協”のJC連覇
最強証明ジェンティル来春再びドバイへ
スポーツナビ
2013年11月24日 19:50

ジェンティルドンナが史上初のJC連覇
ジェンティルドンナが史上初のJC連覇【写真:中原義史】
世界の強豪馬を日本馬が迎え撃つJRA秋の大一番、第33回GIジャパンカップが24日、東京2400メートル芝を舞台に争われ、ライアン・ムーア騎乗の1番人気ジェンティルドンナ(牝4=栗東・石坂厩舎、父ディープインパクト)が優勝。好位追走から直線残り400メートルで抜け出すと、ゴール前強襲してきた浜中俊騎乗の7番人気デニムアンドルビー(牝3=栗東・角居厩舎)をハナ差振り切り、JC史上初の連覇を達成した。良馬場の勝ちタイムは2分26秒1。

 ジェンティルドンナは今回の勝利で通算13戦8勝(海外1戦0勝)。JRA重賞は7勝目、GIレースは2012年桜花賞、12年オークス、12年秋華賞、12年ジャパンカップに続き5勝目。騎乗したムーアはJC初勝利、同馬を管理する石坂正調教師は昨年に続きJC2勝目となった。

 一方、デニムアンドルビーからクビ差の3着にW・ビュイック騎乗の11番人気トーセンジョーダン(牡7=栗東・池江寿厩舎)が入線。2番人気の支持を集めていた内田博幸騎乗のGI4勝馬ゴールドシップは15着に沈んだ。

「改めて最強馬の1頭だと示すことができた」

これまでの惜敗のうっぷんを晴らす勝利、最強馬であることを改めてアピールした
これまでの惜敗のうっぷんを晴らす勝利、最強馬であることを改めてアピールした【写真:中原義史】
「最後の最後、ファンの皆さんの思いや応援を、ジェンティルドンナが遂げてくれました」

 石坂調教師が勝利の喜び、安堵感、すべての感情をかみしめるようにして語った。今年は春のドバイ遠征から始まり、3戦してドバイシーマクラシック2着、宝塚記念3着、天皇賞・秋2着。決して走っていないわけではないし、牝馬であることを考えれば牡馬に混じっての超一線級を相手に常に勝ち負けしている競馬は、むしろ褒められるべきこと。しかし、ジェンティルドンナは“並みの牝馬”ではない。たとえ牡馬が相手のGIで2着、3着に来たとしても、極論してしまえば“期待外れ”になってしまう。それほどまでに期待をかけられる存在となっていた。それだけに、もし今回敗れていれば『ジェンティルドンナ幻想』も崩れ去っていただろう。その崖っぷちの戦いで、ジェンティルドンナは見事に結果を出した。石坂師が乾坤一擲の思いを語る。

「今年は本当に悔しい思いをしてきましたけど、ファンの皆さんもきっと、ジェンティルドンナはもっと走ると思っていて下さったと思います。ジャパンカップを連覇することができて、改めて最強馬の1頭だと示すことができました」

V請負人、英国の名手ムーアを指名

「プレッシャーはなかった」とムーア、その言葉どおり冷静そのものの騎乗ぶりだった
「プレッシャーはなかった」とムーア、その言葉どおり冷静そのものの騎乗ぶりだった【写真:中原義史】
もう負けられないこの一戦、石坂師、ひいてはジェンティルドンナ陣営は必勝を期してジョッキーを岩田康誠から英国のトップ騎手、ムーアにスイッチして臨んだ。
「これはもう勝負の世界ですから、ハッキリ言いますと、天皇賞が終わった後にジョッキーを替えようと思いました」(石坂師)

 V請負人として指名されたムーアは、これがステッキ一本で世界を渡り歩くプロの勝負師というものなのだろうか、こちらが思っているより遥かに冷静にこの状況を受け止めていたようだ。
「陣営から特にプレッシャーをかけられたわけではないし、電話一本で『乗ってくれないか』と言われただけで、とてもいい牝馬だから自分としては喜んで乗ったに過ぎないです。これが日本国内のジョッキーだったらプレッシャーが重かったと思いますけど、僕は外から来たジョッキーなので、その面ではプレッシャーはそんなに感じていませんでした」

名手の腕、女王の底力

「次も喜んで乗りたい」とムーアも女王ジェンティルドンナの能力を絶賛だ
「次も喜んで乗りたい」とムーアも女王ジェンティルドンナの能力を絶賛だ【写真:中原義史】
日本の競馬ファンにとってはスノーフェアリーとのコンビが印象深い30歳の若き名手。石坂師から出されたオーダーはたった一言、「人馬のリラックスがあれば、それでOKだ」。ではその言葉を受けて、ムーアはどう勝利に導いたのか。

「特に作戦はなかったんですが、結果的にペースがすごくゆっくりで他の馬も折り合いに苦労していた。自分もジェンティルドンナを1コーナー過ぎくらいまでは手の内に入れていたんだけど、ペースが遅くなってからはハミを持っていくような気配だったので、ここで無理に下げると絶対にいいことがないと思って、妥協して少し前に行かせました」
 完ぺきな騎乗でもっての勝利、というわけではなかった。事実、「考えていたよりも前の位置になって、仕掛けていくのも200メートル早くなってしまった」と振り返ったムーア。しかしながら、折り合いを探るギリギリの中で馬としっかり会話を交わし、ケンカをせずに“最良の妥協点”に落とし込む――この一連の作業を初コンビの相手にすぐさまやってのけてしまった腕は、さすがというべきだろう。

 そして、「200メートル早くなった」仕掛けでなお、最後まで他馬に先頭を譲らなかったジェンティルドンナの底力は、石坂師の言葉を借りれば「最強馬の1頭だと示した」に十分すぎるほどのパフォーマンスだった。これまでの馬と比較するのは嫌いだけど、と前置きした上でムーアが語った。
「日本のファンのみなさんにはスノーフェアリーが印象に残っていると思いますが、優秀な牝馬の共通点は、すごく賢くて、反応が良くて、ギアチェンジができて、勝つんだという闘争心を持っていること。ジェンティルドンナはもちろん、その全部を持っている。次も騎乗依頼が来たら、ぜひ、ぜひ、喜んで乗りたいですね(笑)」

来春ドバイ挑戦が濃厚

来春ドバイ挑戦へ、今度こそ日の丸を掲げたい
来春ドバイ挑戦へ、今度こそ日の丸を掲げたい【写真:中原義史】
ジェンティルドンナの今後について、石坂師は「ジャパンカップを勝ったら少し休ませたいと思っていたので、自分としては有馬記念はほぼ出走しないと思っています。来年からまた大きなレースを目指していきたいです」と明言。正式に決まったことではなく、まだ計画段階という前提ながら、「ドバイに行くことになると思う」と話した。

 日本が誇る国際ビッグレースを連覇した女王にとって、あと足りないものがあるとすれば、それは海外でのGI勝利という勲章。来春、日の丸をまとった貴婦人が再びドバイの地を踏む。今度こそ世界中のスポットライトを一身に集めたい。

<了>

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