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2013年11月26日(火)更新
わずか1週間でハイウエイがデコボコ道
ジャパンカップはジェンティルドンナが近年の良馬場ではもっとも遅い2分26秒1の時計で、軽量を利して外から猛然と襲い掛かるデニムアンドルビーをからくもハナ差凌ぎ切った。これで史上初のJC連覇。もはや牝馬であって牝馬ではない。スピード+パワー+破壊力は周知の通り。今年のJCではどんな展開にも負けない勝負強さの完全4ツールを披露した。
それでも2分26秒1の勝ち時計は遅い。昨年のJCより3秒も遅く、6Rの500万(優勝ローレルラスター)より0.2秒劣る時計。振り返れば同様に条件戦より遅かった90年の有馬、「奇跡のラストラン」と言われたオグリキャップを思い出す。ただ、長距離の時計は一つの目安であって強弱そのものではない。馬場や前半の流れ一つでどのようにも変化する。
むしろ、全体時計の大幅ダウンは強い馬、人気馬には厳しい。タイムが落ちればすべての馬にチャンスが分散されるからだ。さらに折り合い。勝負が一瞬で決まる以上、折り合いに一つのミスがあれば、どんな強い馬であろうと脚元をすくわれる。ことに折り合いに難のあるジェンティルにとって、図らずもエイシンフラッシュが引っ張る前半5F62秒4のスローは楽ではなかったはず。
昨年のJCが60秒2のペースで2分23秒1の勝ちタイム。今年は前半2.2秒遅い流れで3秒も遅い時計を克服したのだから、結果として遅い時計はジェンティルがもう一つ隠し持っていた強さを浮き彫りにしたといっていいのではないか。それにしても難しい馬をスローでピタリと折り合わせたムーアは素晴らしい。世界№1の腕を堪能させて貰った。
ただ、問題は時計じゃなく馬場の造り方、あり方であろうか。どうみてもおかしい。ベースは先々週の東スポ杯(優勝イスラボニータ)で1分45秒9の大レコードが出たばかりの高速馬場である。以降、大した雨も降らないのにジャパンC週のタイムダウン。誰にこれほどのタイムダウンを予想できようか。
いかに参戦の外国勢が甘いからといって、こうクルクルと馬場を変えられては、「推理するスポーツ」を根幹から揺るがすようなゆゆしき事態。ファンを愚弄しているのか。 馬場は造っちゃいけない。あくまで保つのが造園課の仕事。あとは雨風、自然の流れに任すしかない。
それが近年の仕事といったらどうだ。明らかに1週、ひどい時にはわずか半日で馬場を造り直している。いったい何のために造り直しているのか。GⅠのために。ことの是非はともかく、それも一つのポリシーだろう。しかし、本来は「GⅠ仕様」の芝などという言葉が存在してはならないだ。
今回のJCは突然そんなポリシーさえ忘れてしまったかのような馬場。まさに「GⅠ仕様」を嘲笑うかのような真逆の芝コンディション。自分たちが競馬を造っていると思っているのだろうか。だとしたら造園課はあまりに思い上がっている。とにかく、このわずか1週間の変化は普通じゃなかった。重ねて申し上げるが、馬場は造ることではなく保つことなのだ。
清水成駿
1948年東京都生まれ。明治学院大学卒業と同時に、 競馬専門紙「1馬」に入社。旧東京系のトラックマンを担当。 そこで馬を見る類まれな才能を高く評価され、 20代の若さで競馬評論家となり、35歳と異例の速さで取締役編集局長に就任。競馬の見方を180度変える斬新な推理は、旧体質の予想界に新風を吹き込み、高配当を次々に的中。予想欄に一人ポツンと打った「孤独の◎」は、ファンの熱烈な支持を集め、 今でも語り継がれている「穴の清水」の代名詞となる。
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