2013年10月30日水曜日

返し

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2013年10月29日(火)更新

GⅠ連勝!吹っ切れた福永の倍返し

良馬場まで回復した天皇賞秋は、あと400、中位で満を持したジャスタウェイが、福永のGO!に間髪をいれず、追い出されると文字通り矢のように弾け、アッという間に前をとらえた。ラスト100は離す一方の独走。終わってみれば想定より1秒速い1分57秒5、2着ジェンティルドンナに4馬身差の楽勝であった。
正直、秋天のジャスタウェイは別馬。これまで15戦、成績をどう引っくり返しても、ジャスタウェイがこれほど強い証拠は何一つない。カミソリのように切れる馬であるのはわかっていた。が、それは強さとはまた異質のもの。実際、新馬とアーリントンCを勝って以来、久々3勝目の快挙がGⅠ圧勝なのだ。改めて父ハーツクライが内包するトニービンの驚異的な爆発力を思わざるを得ない。
勝因は体調の良さに得意の東京など色々ある。が、一番はスタート。以前はほとんど4角10番手以降という位置取りが、少頭数のスローもあって前走の毎日王冠は4角5番手、今回はさらに磨きがかかった。
前後半5F58秒4-59秒1の一貫して速い流れの中、前を3馬身にとらえる理想のポジションをキープできたのだ。であれば上がり35秒8の2着ジェンティルに対して、これを1.2秒凌ぐ34秒6。都合ジェンティルが4馬身切れたのは当然であり、まさにものの見事に嵌まったのだ。
なぜ、嵌まったのか。馬もあるが人もある。先週のエピファネイアで初めて牡馬クラシックGⅠの壁を突き破った福永。完全に吹っ切れたのだろう。10ある力を倍も引き出したというほかない。でなければこれまでのどこにも、ジャスタウェイ4馬身勝ちの裏づけはとれない。
伸び伸びと乗った福永に対してジェンティルドンナの岩田は窮屈。負けたからいうわけじゃないが、たとえ8分でもあれだけのスタートが切れて負けてはいけない馬。他にGⅠレベルといえるのは嵌まった際のエイシンフラッシュくらい。GⅢないしGⅡ程度のメンバー相手。それが差された。窮屈だからだろう。走る前からガチガチであった。実際、ドバイから勝てない。その焦りがあるのだろう。それが馬にも伝わってしまったのではないか。
さて、ジャスタウェイの次走は?どこを選ぶか興味深い。まともなら勝ち運をつかんだところでベスト1600のマイルCS。カンパニーの道を辿るのが普通でもこの厩舎はよくわからない。
一方、ジェンティルドンナは叩いて次のJCでは確実に良くなってくるはず。あとは岩田の気持ち一つ。吹っ切れるか、吹っ切れないか。乗り替りと背中あわせは結構しんどい。
プロフィール
清水成駿
1948年東京都生まれ。明治学院大学卒業と同時に、 競馬専門紙「1馬」に入社。旧東京系のトラックマンを担当。 そこで馬を見る類まれな才能を高く評価され、 20代の若さで競馬評論家となり、35歳と異例の速さで取締役編集局長に就任。競馬の見方を180度変える斬新な推理は、旧体質の予想界に新風を吹き込み、高配当を次々に的中。予想欄に一人ポツンと打った「孤独の◎」は、ファンの熱烈な支持を集め、 今でも語り継がれている「穴の清水」の代名詞となる。

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