2012年4月9日月曜日

柏木SAKURA

桜花賞
2012年04月09日(月)18時00分
注目数:1人
 待望の良馬場で行われた最初のクラシック。勝ちタイムの1分34秒6(レースバランス47秒1-47秒5)は、最近10年ではキストゥヘヴン=アドマイヤキッスの2006年と並んで、もっとも遅い勝ち時計だった。

 これは良馬場とはいえ、例年より全体に時計を要する芝コンディションが影響したと思われるが、当日の古馬1000万下の特別が1分35秒2(スローで48秒2-47秒0)だったこと、前日の3歳500万下が1分35秒0(やっぱりスロー48秒0-47秒0)だったことと照らし合わせると、マイルのGIとすると必ずしもレベルの高いものではなかった危険はある。

 よく「桜花賞のゴール前をみていると、オークスの直線が予感できる」などといわれるが、「オークスはあの馬だ」。そんな印象は乏しかった気がする。

 ほとんどがマイラーや、マイラーにも近い中距離タイプに集中する近年、一般に、桜花賞での力関係はそのままストレートにオークスに結びつくと考えられている。事実、2002年から2011年までの10年間のオークス3着以内馬30頭のうち、「20頭」が桜花賞出走馬によって占められている。

 しかし、もっと全体の頭数が多かった1992年から2001年までの10年間では、オークス3着以内の30頭のうち、桜花賞組は「22頭」だったという記録がある。近年のほうが桜花賞とオークスの関連が密接になったとする根拠は乏しい。6週間後の2400mのオークスでは、昨2011年のエリンコート、ピュアブリーゼ。2010年のサンテミリオン、アグネスワルツ。さらには2007年のベッラレイア、2006年のカワカミプリンセスのような、桜花賞には顔をみせなかった別路線組の台頭もあるのではないか。そんな視点を重ねながら振り返りたい。

 ジェンティルドンナ(父ディープインパクト)の勝因の第一は、チューリップ賞前の発熱のアクシデントをむしろプラスに転じさせたのではないか、そう思わせるほどの陣営のしたたかで、かつ巧みな仕上げの手腕だった。反動の心配ない状態になったから当然のように路線をくずさず1600mのチューリップ賞を選んだ。使って期待通り大きく良化した。そのときテン乗りだった岩田康誠騎手もすごい。活力の消耗を最小限にとどめつつ、衆目一致の候補ジョワドヴィーヴルを目標にジェンティルドンナの能力を確認するかのような位置取り、仕掛け、コース取りで、トライアルとすれば非の打ちどころなしの予行だった。今回は自信にあふれていた。

 好スタートから一旦は下げ、勝負どころから自身でスパートして、今回は外に出した。メンバー中No.1の上がり34秒3。着差以上の完勝である。余力さえあった。シンザン記念を男馬相手に1分34秒3で勝っていたから、体調さえ整えば好走必然の力関係だったとはいえ、この桜花賞制覇、関わったスタッフにとり会心のGIだろう。

 5戦すべて地元関西圏の1600m。成績だけでなくスピード系マイラー色が濃い牝系の出身。折り合い面の不安はなく少々の距離延長は問題ないだろうが、2400mになってプラスはないことも否定できない。桜花賞より少し信頼性は落ちると思える。

 2着ヴィルシーナ(父ディープインパクト)もまた、陣営の選択したローテーションが結果的に正解だった。ディープインパクト産駒の最大特質のひとつは、利発で素直なこともあって、レースに出走すると懸命に走りすぎてしまうこと。だから、間隔を詰めての重賞挑戦は歓迎ではない気がする。1800~2000mのレースから出発し(ダイワスカーレットがこの手法だった)、わざわざ東京に遠征して1600mにシフトし、クイーンCを快勝。今回はジェンティルドンナに屈したが、すでに東京は経験している。エリカ賞2000mを勝っている。牝系は世界でも知られるグロリアスソングが4代母(ジャパンCのシングスピールなどがこの一族)。桜花賞好走グループの中で、距離延長に大きな死角がないのがこの馬かもしれない。

 アイムユアーズ(父ファルブラヴ)は、ずっと牝馬の主流路線を歩んで、2つの1400m重賞を制してこれで[3-2-2-0]となった。阪神JFで負けたジョワドヴィーヴルには見事雪辱したが、別路線の2頭に先着を許してしまったというのが、全体の勢力図(ランキング)の中での力関係か。だが、スキなしの正攻法で桜花賞0秒2差の3着は見事である。ジャパンCを勝っているファルブラヴ(その父フェアリーキング)の産駒が、あまり距離をこなせないのは不思議だが、ファルブラヴ牝馬の成功が短距離型に多いのは否定できず、ここまでのレース内容から、同馬はオークスが目標ではないだろう。

 4着サウンドオブハート(父アグネスタキオン)は、シャープで軽快なスピード能力が持ち味。今回はこの馬らしいケレンなしのレースを展開したが、誤算は2歳秋に460kgでもちょっと線の細く映った体が、休み明けで直前輸送の今回は448kgだったこと。とくに細くもないが、力強く成長した体ではなかった。この馬はマイラー色が濃い。

 5着メイショウスザンナ(父アグネスデジタル)は、現時点ではあまり切れるタイプではないので、「47秒1-47秒5」の平均ペースを考えると、これはあくまで結果論だが、もう少し前で流れに乗りたかったか。だが、それでは一連の内容にプラスαが生じないのもたしかで、伏兵11番人気馬とすれば正解の好走だろう。母型に配されてきた種牡馬はサンデーサイレンス、マルゼンスキー、シカンブル…。オークスでは怖い気がする。

 人気のジョワドヴィーヴル(父ディープインパクト)は、ブエナビスタやアドマイヤオーラの下という観点を別にすると、父ディープインパクト産駒の最大の長所(素晴らしいバネ)と、激走しすぎるから、いまのところあまりタフに連続して快走できない最大の弱みを、同時にすべて受け継いでしまった牝馬のように思えてきた。今回は調教の動きも素晴らしかった。でも、父は調教ではあまり真剣に走らなかった一面があるから、とぼけてふわふわ走っているよう見えて、この小さな牝馬、いつも本人は懸命なのかもしれない。光ってはいたが、迫力に乏しかった。成長力うんぬんではなく、目標のビッグレースに不安なしの仕上げ(当然、負担はかかることになる)で臨んだからといって、期待通りの結果が導き出されるような分かりやすいタイプではないのだろう。いまの時点では、オークスの2400mは合わないと思える。

 パララサルー(父ディープインパクト)は、約1週前の輸送で体が減って、当日はもう減らない方がいいと思えた前走から10kg減の434。これはあくまで推測だが、同じグループの、同じようなオーナーの有力馬が重なっているため、出走権のかかった路線では使い分けが生じてしまう。この厩舎だから、アパパネと同じようにもっと早い栗東入厩で、むこうのステップレースを使いたかったのが本当ではないか。ベテランファンのそんな推理を聞いた。鋭い。

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