2014年3月30日日曜日

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競馬コラム
沸騰! 日本サラブ列島

ドバイの3GIと高松宮記念を総展望。
3年前の再現、そして“王”の後継は?

島田明宏 = 文

text by Akihiro Shimada
photograph by KYODO
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2014/03/29 08:00
 今年も、灼熱のカクテル光線のなかで「日本祭り」が見られるだろうか――。
 今週末のドバイミーティング(3月29日、UAEメイダン競馬場)には、8頭もの日本馬が参戦する。例年なら「参加することに意義がある」的な馬が散見されるのだが、今年はどの馬が勝っても不思議ではない精鋭揃いだ。現地時間では29日の発走だが、日本馬8頭のうち7頭が出る3つのGIは日本時間30日未明の発走となる。
 まず、日本馬が出る3つのGIを発走時刻順に見ていこう。
 日本時間30日午前1時39分発走予定のドバイデューティフリー(芝1800m)には、ジャスタウェイ、トウケイヘイロー、ロゴタイプの3頭が出走する。この時期にこの3頭が同じレースに出るのなら、1週後の産経大阪杯で、キズナやエピファネイア、メイショウマンボとやり合うところを見たかったなあ、なんて思ってしまう。それくらいいいメンバーだ。
 大将格は、昨年の天皇賞・秋を圧勝したジャスタウェイ(牡5歳、父ハーツクライ、栗東・須貝尚介厩舎)。今、中距離で、この馬より強い馬が世界にいるのかな、と思うほど、天皇賞・秋も、それ以来4カ月ぶりの実戦となった中山記念も強烈な勝ちっぷりだった。中心はこの馬だろう。

前哨戦を有意義に使ったトウケイヘイロー、逃げ切れるか。

 レースを引っ張るのは、武豊が騎乗するトウケイヘイロー(牡5歳、父ゴールドヘイロー、栗東・清水久詞厩舎)だと思われる。前走の中山記念は、ゲートのあくタイミングが合わずに出遅れ、途中からハナに立つ格好になり、本来の走りができず6着に終わった。
 あの一戦を見て、私は2年前のドバイワールドカップを思い出した。トウケイヘイローと同じように、ハイペースの逃げを武器としていた武のスマートファルコンがゲートで脚を滑らせ、出遅れた一戦だ。途中からポジションを上げることもできず、後方のまま10着に惨敗。本番で初めて、「負けるとしたらこうなったとき」という形が出てしまった。
 それに対してトウケイは、前哨戦で負けパターンが浮き彫りになったわけだから、トライアルをトライアルとして有意義に使うことができた、とも言える。
 武が大逃げを打ち、後ろの騎手たちを慌てさせるシーンを見るのが楽しみだ。
 昨年の皐月賞馬ロゴタイプ(牡4歳、父ローエングリン、美浦・田中剛厩舎)は、中山記念で3着に来て、立ち直った姿を見せてくれた。上昇度という点では前記2頭以上だろう。
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シーマクラシックにはジャパンカップの1、2着馬が参戦。

 日本時間30日午前2時17分発走予定のドバイシーマクラシック(芝2410m)には、ジェンティルドンナとデニムアンドルビーという2頭の大和撫子が参戦する。昨年のジャパンカップの1、2着馬だ。
 しかし、ワールドカップに回ると見られていた昨年のブリーダーズカップターフ優勝馬マジシャンがこちらに回ってきて、一気に相手が強化されてしまった。しかも、ジェンティルドンナ(牝5歳、父ディープインパクト、栗東・石坂正厩舎)は年明け初戦の京都記念で6着だったし、デニムアンドルビー(牝4歳、父ディープインパクト、栗東・角居勝彦厩舎)はジャパンカップ以来の実戦と、臨戦過程はパーフェクトとは言えない。
 厳しい材料はあるが、勝者にふさわしい能力の持ち主であることは間違いない。牝馬は気持ちで走るだけに、期待して見守りたい。

ベルシャ、タルマエで2011年の再現をめざす。

 日本時間30日午前3時5分発走予定のメインレース、ドバイワールドカップ(オールウェザー2000m)には、ベルシャザールとホッコータルマエが出走する。
 ベルシャザール(牡6歳、父キングカメハメハ、栗東・松田国英厩舎)は昨年のジャパンカップダートを勝ち、今年のフェブラリーステークスでも3着。ローテーションといい、芝でレース経験のあることといい、2011年に2着だったトランセンドにイメージが重なる。ホッコータルマエ(牡5歳、父キングカメハメハ、栗東・西浦勝一厩舎)は、ベルシャザールが勝ったジャパンカップダートで3着になったあと、東京大賞典、川崎記念を連勝し、フェブラリーで2着。脚質は異なるが、得意分野などからスマートファルコンのような感じがする。
 オールウェザーのタペタでは、普段芝で走っている馬が好走する傾向があるが、ベルシャザールはオルフェーヴルが勝ったダービーで3着になったこともある両刀遣いだ。
 前述のマジシャンがシーマクラシックに行ってくれたぶん、チャンスが大きくなった。東日本大震災のすぐあと、ヴィクトワールピサとトランセンドによる日本馬のワンツーフィニッシュで人々に勇気を与えた2011年の再現も十分あり得るのではないか。
 これら3つのGIに先立ち、日本時間の29日午後10時10分発走予定のゴドルフィンマイル(オールウェザー1600m、GII)にはブライトライン(牡5歳、父フジキセキ、栗東・鮫島一歩厩舎)が出走する。こちらも、ダートのトップホースでありがながら芝の重賞勝ちもあるというオールウェザー向きの馬だ。
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もうひとつのGI、高松宮記念は?

 今週はもうひとつ、大事なGIがある。スピード自慢が集う高松宮記念(中京芝1200m)である。
「世界のロードカナロア」が引退し、スプリント界の王座が空位になった。次期王者は誰になるのか――。
 メンバーを見回して、まず目に入ってくるのはスマートオリオン(牡4歳、父グラスワンダー、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。連闘で臨んだ前走のオーシャンステークスを内から強引に差し切って快勝。重賞初参戦初勝利にして、一躍「ポスト・カナロア」の有力候補と目されるようになった。

連闘でグラスワンダーのDNAが覚醒したか?

 確かに、パフォーマンスのうえでは、十分次期王者になり得る走りだった。が、昔から「競走馬が最も高い能力を発揮するのは連闘で出てきたときだ」と言われている。私はそれに従い、この馬の単勝を1点で獲った。しかし、獲ったがために、余計に、
――スマートが見せたパフォーマンスは、連闘によるプラスアルファぶんが上乗せされたものだったのではないか。
 という疑いを拭い切れずにいる。
 その一方でやはり、あの強烈な末脚が忘れられず、
――ひょっとしたら、あの一戦でスマートが持っている父グラスワンダーのDNAが覚醒したんじゃないか。
 とも思っている。
 連闘でこそ力を発揮する、という説は、「ストレスが力になる」という考え方に基づいたものだろう。DNAが覚醒するのも同様で、'05年のジャパンカップで世界レコードと同タイムの2着になったハーツクライが、それを機にディープインパクトを破り、ドバイシーマクラシックを勝つところまで登り詰めたのも、極限のストレスで父サンデーサイレンスのDNAが覚醒したからではないかと言われている。
 書いているうちに迷いが消えた。
 次期スプリント王は、連闘で目覚めたスマートオリオンだ。
◎スマートオリオン
○ストレイトガール
▲レディオブオペラ
△レッドオーヴァル
×ハクサンムーン
 私もこれだけストレスがかかっているのだから、そろそろ馬券師のDNAが覚醒してもいいはずだ。

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