2008年11月9日日曜日

netkeibaコラム

矢野吉彦
 競馬最前線「ウイニング競馬」の実況でお馴染みの矢野吉彦が、中央・地方・海外の競馬を最前線から語ります。
プロフィール詳細
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誰もが心浮き立ったJBC
 3日、園田競馬場で行われた今年のJBC。来場客は2万2000人を超え、一日の馬券売り上げ額は20億円を突破しました。なにしろこのご時世ですから、欲を言えばキリがありません。興行的には大成功、メデタシメデタシと言っておきましょう。 最も心配されたのが馬券発売窓口の混雑。でも実際は、大したことなかったですね。出走馬が本馬場に入場した後、オッズをチェックしてからでも馬券を買えました。締切間際というのに長蛇の列が解消されず、怒号が飛び交ったり、買いそびれる人が続出したり、なんていうことはほとんどなし。いつもは開いていない窓口を開け、パドックの周回時間を短くして早めに本馬場入場する、といった対策が功を奏したようです。
 ふだんの園田には、どんな結果になっても常にブツブツ文句を言っているオッサンや、少しでも肩がぶつかるとドスの利いた眼差しで相手をにらみ返すお兄サンがあちこちにいます(決してそういう方々だらけ、と言っているわけではありません。大半はフツウの競馬ファンです。念のため)。そんな“強面”の園田で大混雑必至のJBCを開催したらどうなるか。ハッキリ言って不安でした。ところが当日は、そういう方々でもお祭りを楽しんでいるかのよう。殺気立った雰囲気は感じませんでした。ふだんより圧倒的に多いフツウの競馬ファンの勢いが心地よい高揚感を醸しだし、それにつられてお行儀がよくなっちゃったのかもしれません。そうそう、前日の天皇賞が歴史的名勝負になり、間髪を入れずにJBCの開催日を迎えたというのもよかったと思います。あの激闘の余韻がそのまま持ち込まれたようなところがありましたからね。おかげで、昔懐かしい祭りの賑わいが園田に戻ってきたわけです。あの日はまさに、誰もが心浮き立つ“ハレの一日”でした。
 ところで私は、ふだん、園田へ行くと実況放送室にお邪魔してレースを観戦させてもらっています。競馬実況歴50有余年というわれわれの大先輩・吉田勝彦サンと、その一番弟子・竹之上次男サンにお会いするのを楽しみにしているものですから。しかし今回は、「レース実況に加え、イベント出演、勝利騎手インタビューなど、いつも以上に仕事が立て込んでいて両人とも大忙し。来客の対応はとてもじゃないけど不可能」とのことで、私だけでなく一切の放送室訪問がシャットアウトされてしまいました。それはごもっとも。そこで、お二人とは「夜の打ち上げでご一緒しましょう」ということにしていました。で、その打ち上げが、なんと三人だけの“宴”になったんです。
 今回のJBCがあれほどいい雰囲気で盛り上がったのは、大御所・吉田サンの渾身の吉田節(楠賞の『バンバンバンク~ッ!!』は絶品でした)と、ホープ・竹之上サンの気迫あふれる実況(JBCスプリント&クラシックのダブルGIを見事にしゃべってくれました)があったから(と信じています)。そういう大仕事を終えたばかりのお二人と“水入らず”(酒はタップリ入りましたが)でお話しできるなんて、なんと幸せなことでしょう。園田で行われたJBCだからこそのキーパーソンのホットな話を、独占して伺っちゃったんですよ!
 では、その話のほんの一部をご披露しましょう。竹之上サンいわく「前日の夜は、今までに経験したことのない気分を味わいました。スプリントのスタートまでは緊張していたと思います。でも、それが終わってクラシックを迎えるときには、もう、どうにでもせぇ、と思えるようになりました」とのこと。気持ち、わかります。
 大勢のお客さんが詰めかけたおかげで、騎手にも(馬にも)気合いが入り、すべてのレースで見応えのある攻防が繰り広げられた、というのは、3人が共通して抱いた印象です。吉田サンは、「園田で全レースがフルゲートというのは記憶にありません。それがすべて、実にスムーズに行われました。直前の出走取り消し、枠入りのトラブル、落馬や放馬、審議もなし。これは奇跡と言ってもいいくらい、素晴らしいことです。今回のJBCに携わったすべての関係者が、気持ちを一つにした成果でしょう」とも話していました。「そして、そのJBCクラシックを、ヴァーミリアンと武豊騎手は(園田1870m戦の)レコードタイムで駆け抜けて、去っていったんです。それが何よりでした」。これが吉田サンの総括。おっしゃるとおり、次に園田でJBCが行われるまで、このレコードは破られないと思います。歴史に残るJBCだったことを物語る確かな証しになりました。
 最終レース、兵庫クイーンCのスタート前、吉田サンが「園田競馬は明日も明後日もあります」とアピールすると、ファンからは大きな拍手。これに吉田サンが「ありがとうございます」と応えると、再び拍手が沸きました。吉田サンは「50年以上実況をやってきて、初めてお客さんと会話ができたような気がした」そうです。私としては「それが何より」でした。
 今回のJBC、ホントによかったです。竹之上サンは「これを来年の名古屋につなげなければ」と語っています。私も同感。ぜひそうしてほしいと思います。 さて、今週のJRAはGIウィークの合間。アルゼンチン共和国杯は、JBCスプリントをバンブーエールで鮮やかに逃げ切った松岡騎手が手綱を取るダンスアジョイ中心で行きます。ではまた来週。

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