可能性を感じさせた、 園田でのJBC開催
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近年のJBCでまず感じるのは、中央の厩舎関係者にも完全に定着したということ。 JBCクラシックが1億円、JBCスプリントが8000万円という、中央競馬と比較してもかなり高額な賞金だけに当然とも思えるが、JBCがスタートして何年かは、ダートの有力馬を管理している調教師でもJBCのことを意識している方ばかりではなかった。 中長距離路線では、JBCクラシック→ジャパンカップダート→東京大賞典という秋のGI(JpnI)路線が関係者にもファンにも完全に定着したし、短距離路線においても、JBCクラシックが唯一のJpnI(GI)であり、最高賞金のレースでもあると認識されるようになった。
今年その象徴となったのが、古馬チャンピオンのヴァーミリアンと、ダートでは無敗の3歳チャンピオンであるサクセスブロッケンによる、初めての直接対決が実現したということだろう。
ヴァーミリアンは昨年同様ドバイ遠征以来、サクセスブロッケンもジャパンダートダービー圧勝以来と、両陣営ともに休み明けながら、秋の早い段階からJBCクラシックが復帰戦になるであろうことを表明していた。言うまでもなく馬は生き物であるだけに、公言した予定どおりにいかないことも常だが、両陣営ともに万全の状態でレースを迎え、そしてダート競馬の歴史に残るような名勝負を繰り広げた。
残念ながら今年はスプリントで4着に敗れたブルーコンコルドだが、この馬も4年にも渡ってJBCを盛り上げている主役の1頭。05年は名古屋のJBCスプリント、06年は川崎のJBCマイルを制し、昨年の大井では「JBC3階級制覇を目指す」としてクラシックに挑戦し、話題となった。その昨年は4着に敗れたが、今年はマイルチャンピオンシップ南部杯で3連覇を果たし、8歳でも衰えのないことを証明して見せた。そして今年はアドマイヤドンに続くJBC3勝目を目指し、JBCスプリントに断然人気で臨んだことも、今年のJBCを盛り上げる重要な要素のひとつとなった。
そのJBCスプリントは、結果的にではあるが、ダートスプリント路線の「世代交代」となった。ブルーコンコルド、メイショウバトラー、リミットレスビッドと、この路線を牽引してきたベテラン勢が4着以下に沈み、勝ったのはこれが重賞初制覇となるバンブーエール。そして2着は、前走白山大賞典で重賞初制覇を果たしていた3歳馬のスマートファルコンだった。
バンブーエール陣営のJBCスプリントに賭ける意気込みは相当のものだったようだ。一方、デビュー以降マイル以上の距離しか経験のなかったスマートファルコンは、クラシックでは除外確実と見て、JBCスプリントと武蔵野ステークスと、両天秤にかけてのエントリーだったとのこと。
JBCのみならず、地方競馬で行われるダートグレードでは、限られた所属枠ゆえ中央勢にとっては出走すること自体が容易ではない。そうした状況でのスプリント路線の世代交代も、今年のJBCを象徴する出来事のひとつだった。 さらに今年注目されたことのひとつとして、8回目にして園田競馬場で初めてJBC開催が実現したことが挙げられる。
大阪という日本第二の都市の中心部から近く、交通手段でも極めて便利な立地条件にある園田競馬場で、これまでJBCが行われてこなかったのは、おそらくその施設の小ささゆえだろう。 1周1051メートルは、現在ダートグレードが行われている競馬場ではもっとも小回り。しかしそれ以上にJBCの園田開催に二の足を踏ませていたのは、住宅街の中の限られた土地、そして限られたスタンドで、押し寄せてくるファンを収容しきれるかどうかという不安だったのではないだろうか。
しかしその不安は見事に払拭された。 JBCのレースが行われるときには、スタンド前は人、人、人で埋めつくされた。近年の園田競馬場では見たことのない光景だった。 にもかかわらず、馬券の売り残しはほとんどなかったようだし、食事面でも行列こそできていたものの、食べられなくて困ったというようなことも聞かれなかった。 これはおそらく05年の名古屋での経験が生きたものと思う。 目標としていた入場人員25,000人に対し、実際の入場は22,174人。これは目標に達しなかったというより、仮に25,000人のファンが来場してもスムーズに競馬開催が行われるよう周到な準備をした上で、その想定内に収まったと捉えたい。
一方で、1日の総売得目標17億円に対し、20億円を超える売上げがあったことは評価に値する。 もちろんこれには、最初にも書いたとおり、ヴァーミリアンVSサクセスブロッケンという、競馬ファンなら誰もが注目するであろう対戦が実現したことも大きい。しかし裏を返せば、JBCがそれだけのレースになったということでもある。 それほどの大一番が滞りなく実施できたということは、園田競馬場のみならず、地方競馬全体の自信にもなっただろうし、今後さまざまな展望も開けてくる。
JBCは、さまざまな競馬場での持ち回り開催がひとつの「ウリ」としてスタートした。しかし実際には、第4回までは大井、盛岡、大井、大井という開催で、「持ち回りと言いながら、結局は大井と盛岡でしかできないのか」という声も聞かれた。しかしその後は、距離にある程度の融通を持たせることで、名古屋、川崎、園田での開催を実現させた。
来年は名古屋での2度目の開催が決まっているが、さて、その後はあらたにどの競馬場で開催が可能だろうか。 札幌は、集客や施設面での不安はないが、距離的な面で問題がありそうだ。スプリントは引き込み線を使えば1100メートルがとれるが、クラシックは1700メートル、もしくは2400メートルでは合格とはいえそうもない。 門別競馬場は、大井、盛岡とともに1200、2000の基本的な距離がとれる上、フルゲートも16頭で申し分ない。しかし交通の便と、何よりスタンドなどの施設面を考えると現状では厳しいと考えざるをえない。
水沢は、盛岡がある以上は施設面で見劣りがする。浦和は2000メートルのフルゲートが11頭では少な過ぎる。 集客や交通の便では船橋が理想的だが、距離面が難しい。1200と2000の距離設定もあるにはあるが、トリッキーなコースで最近ではほとんど使われていない。クラシックが園田より短い1800メートルになるのはいいとしても、スプリント(もしくは川崎のようにマイル)が1500か1600では、2つのレースの距離設定があまりにも近過ぎる。内回りの1400メートルというのもあるが、現実的ではない。船橋は距離設定で悩むことになりそうだ。 金沢は1400メートルと2000(もしくは2100)メートルでフルゲート12頭が可能。佐賀はすでに毎年1400メートルと2000メートルでダートグレードを開催している実績がある。この2場は、公共交通機関が貧弱という点では不安があるが、コースや施設面に関しては問題がなさそうだ。 地方競馬らしさをアピールするためにも、コース面で問題のない金沢、佐賀あたりでのJBC開催は検討の余地があるのではないだろうか。 今後に向けて、夢が大きく広がる園田競馬場でのJBC開催だった。
取材・文:斉藤修写真:いちかんぽ
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