2009年11月6日金曜日

ハロン

成長し続ける7歳馬、GI(JpnI)8勝目の日本記録

 ヴァーミリアンにずらりと◎が並んだ。単勝は最終的に1.3倍。その期待にこたえれば、02~04年のアドマイヤドンに並ぶJBCクラシック3連覇。そして、何頭かの名馬が越えられなかったGI(JpnI)勝利数の日本記録を更新して8勝目となる。
 現役馬でいえば、このレースにも出走しているブルーコンコルドが昨年10月のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでGI(JpnI)7勝目を挙げ、続いたカネヒキリは今年の川崎記念JpnIでその記録に並んだ。そしてヴァーミリアンは、今年6月の帝王賞JpnIを圧勝してその2頭に追いついた。
 GI(JpnI)8勝の新記録達成は、やはり楽なものではなかった。
 外から一気にマコトスパルビエロが交わして先頭を奪うと、さらにワンダースピードが続き、好スタートから一旦はハナに立ったヴァーミリアンは、内の3番手に控えた。
 勝負どころの3コーナーでもヴァーミリアンの武豊騎手の手ごたえは楽。しかしラチ沿いのすぐ前にはマコトスパルビエロ、外にはワンダースピード、さらには直後にブルーコンコルドが迫ってきていて、外に持ち出すことができない。手ごたえはよくても、三方を囲まれ自分からはまったく動けない状況だった。
 すでに外に持ち出す余裕はなく、ほとんど隙間のないラチ沿いから抜けてこられるのだろうかと思ったが、193メートルと短い名古屋の直線で、マコトスパルビエロの内からぐいとアタマ差前に出たところがゴールだった。
 「とにかく内をずっと狙っていました。見ているほうはドキドキしたかもしれません」と武豊騎手。見ている者の印象よりも、自信を持っての抜け出しだったようだ。
 2着のマコトスパルビエロから、さらにクビ差でワンダースピードが入り、終始3頭が一団で競り合う見ごたえのあるレースだった。
 ヴァーミリアンは、さすがに7歳の秋ともあれば、成長や上積みはないだろうと考えるのが普通だ。しかし石坂正調教師は「成長し続けている」という。それは気性面だ。「競馬に集中している。一切ムダな動きはしない」と。なるほど、そうした部分の成長が、体力的な部分をカバーしているのだろう。
 JBCクラシックJpnI3連覇に、GI(JpnI)8勝目。あらためてすばらしい記録だ。
 今年もJRA勢が上位を独占する結果となり、地方最先着は、地方勢ではもっとも期待されていた笠松のマルヨフェニックスの5着。勝ったヴァーミリアンから2秒4の差をつけられた。スタートに難のある馬で、今回も伸び上がるようなスタートで、出遅れというほどではないものの、決していいスタートとはいえなかった。JpnIでは、これで昨年の帝王賞(4着)に続いての掲示板確保。さすがにJpnIクラスになると厳しいが、JpnIIIならどこかでひとつくらいはと期待したい。


 
武豊騎手
  スタートがよかったので、このコースならハナを切ってもいいかなと思っていました。とにかく乗りやすい馬です。外には出られないと思い、内がちょっとあいたときに一気に行こうと思いました。3連覇ですが、(馬の状態は)今が一番いいかもしれないです。  
 
石坂正調教師
  手ごたえは十分あるけど、前に馬がいて出られない展開。あそこから出てこられたのがヴァーミリアンの力ですね。落ち着いて競馬に集中していて、よくぞこういう精神状態の馬になれたなと思います。体力的に衰えを見せていませんし、次のジャパンカップダートでも勝利に向かっていくことができると思います。


歴史を重ねた第9回JBC、課題はいかに有力馬を集めるか


 9年目を迎えたJBCは、05年に続き4年ぶりに名古屋競馬場での開催となった。
 
 4コーナー寄りのスタンド1階のスペースには、過去のJBCを振り返ることができる展示があった。第1回のJBCクラシックを制したレギュラーメンバーの鞍上、松永幹夫騎手はすでに調教師となり、先日の秋華賞をレッドディザイアで制した。また、第3回のJBCスプリントを制したサウスヴィグラスは、種牡馬として産駒のシルバーウインドを今年のスプリントに送り出してきた。あらためてJBCが歴史を重ねていることを感じさせられた。
 

 前日、東京では木枯し1号が観測され、本州の太平洋側ではこの日から急激に気温が低下。とはいえ、空模様を心配する必要がない快晴の下でのJBC開催となったのは何よりよろこばしい。
 入場人員については最後にも触れるが、4年前より減少したとはいえ、普段では見られないほどの多くのファンが来場し、JBCらしい賑わいを見せていた。
 さて、肝心のレースだが、まず今年感じたのは中央・地方の格差だ。 
 過去に地方馬がJBCを制したのは07年スプリントのフジノウェーブのみだが、地方馬が馬券圏内に好走するのはそれほどめずらしいことではなかった。しかし今年は、スプリントでの地方馬最先着がノースダンデー(船橋)の4着、クラシックがマルヨフェニックス(笠松)の5着。両レースを通じて3着以内に地方馬が1頭も入らなかったのは、第2回以来2度目のこととなる。
 ただ、必ずしも中央勢はベストメンバーが揃ったというわけではなかった。Road to JBCの東京盃JpnIIを快勝し、スプリント連覇を目指していたバンブーエールが浅屈腱炎により戦線離脱。クラシックでは、Road to JBCのマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを圧勝したエスポワールシチーがジャパンカップダートGIを目標にJBCは回避し、加えてフェブラリーステークスGIの覇者サクセスブロッケンは補欠1番のまま除外となっていた。
 それでも地方馬が歯が立たなかったのは、この10年ほどでダート路線が充実したことにより、中央のダート戦線の層が格段に厚くなったことがある。実際に、このJBCの直後、11月7日の武蔵野ステークスGIIIには、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを除外になったテスタマッタや、JBCクラシックJpnIを除外になったサクセスブロッケンが出走予定で、とてもGIIIとは思えない豪華メンバーによる対戦となりそう。
 対して地方馬は、今年ここまでに行われたダートグレードで勝ったのは、2歳戦を除くと、ダイオライト記念JpnIIのフリオーソのみ。そのフリオーソは、当初はJBCクラシックJpnIに出走意欲を見せていたものの、結局は間に合わず、東京大賞典JpnIを目指すとして回避。フジノウェーブにしても、年齢的なことに加え、得意の舞台は大井の1200メートル。JBCスプリントJpnIがここ2年、同馬にとって実績のない1400メートルで行われたことは不運だったかもしれない。
 こうした傾向は、JBC以外のダートグレードでも見て取れた。たとえばJBCの直前に行われた白山大賞典JpnIIIやマイルチャンピオンシップ南部杯JpnI。中央勢が上位を独占したという結果だけでなく、スタート直後から前に中央勢が固まり、地方馬はぽつりぽつりと中団よりうしろを追走するという展開で、レース前半から力の差を感じさせられた。
 そもそも賞金体系に大きな差があるのだから、中央に素質馬が集中するのはしかたのないこと。とはいえ、ダートグレードがスタートした97年以降でも、アブクマポーロ、メイセイオペラ、トーホウエンペラー、アジュディミツオー、フリオーソなど、GI(JpnI)級の大レースで常に勝ち負けできる活躍馬が地方からも出現していた。
 JBCを頂点とするダートグレードを盛り上げるには、やはり地方競馬からもそうした活躍馬が出て、中央の有力馬と互角に戦うシーンが必要だろう。

 最後に入場人員と売上げについて触れておきたい。
 
 今年、名古屋競馬場の本場入場人員は14,979名。05年の19,085名からは約22%減だが、4年前は名古屋競馬場でのJBC開催が初めてでものめずらしさがあったこと、また近年では馬券の売上げがネットにシフトしていることなどを考えれば、これは悲観する数字ではないように思う。むしろ05年のときは、馬券窓口や場内の食堂が明らかに対応しきれていなかっただけに、名古屋競馬場の施設を考えれば、大レースを盛り上げるには今年程度が快適に過ごせる数字だったようにも思う。
 大切なことは、今年来場した14,979名のうち、どれだけ多くの人が通常の開催にもリピーターとして通ってくれるかどうかだろう。
 馬券の売上げでは、スプリントが4億8669万1500円で4年前比約18%減、クラシックが7億5600万1100円で同約7%減、当日全レース合計では16億1908万5800円で同約14%減となった。
 これが、一部ネット発売で発生したトラブルが影響したものかどうか。ネットでの馬券売上げ比率が年々大きくなっている現状だけに、さらなる対策は必要だろう。
 クラシックに比べてスプリントの減少が大きく、また全レース合計よりも減少が大きいのは、おそらく出走していれば有力馬の1頭になっていたであろうフェラーリピサが取消した影響が大きいだろう。馬券的な妙味が少なくなってしまったからだ。12頭という限られたフルゲートの場合、馬券にからむ可能性の高い有力馬をどれだけ多く出走させられるかが、馬券の売上げにも直接影響を与えるといえそうだ。

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