女王に新たな勲章が贈られた。中央競馬の発展に特に貢献があった馬をたたえる顕彰馬の16年度記者投票の結果が12日に発表され、G1・7勝のジェンティルドンナ(牝7)が32頭目、牝馬では5頭目の顕彰馬に選定された。
 G1・7勝の名牝に、新たな称号が加わった。国営競馬時代を含め80年以上の日本の近代競馬において、4頭しかいなかった牝馬の顕彰馬。そこへジェンティルドンナが、ウオッカ以来5頭目として名を連ねた。
 選出には投票者198人(1人あたり最大4頭に投票)中75%(149票)以上の得票が必要で高いハードルだったが155票を獲得。オーナーである(有)サンデーレーシングの吉田俊介代表、手掛けた石坂正師とも「大変光栄です」と喜びを語った。
 7度のG1制覇には多くのドラマがあった。12年には史上4頭目となる牝馬3冠を獲得。その後の12年ジャパンCでは凱旋門賞帰りのオルフェーヴルと体を接しての激闘を制した。14年のドバイシーマCは多くの不利を受けながらムーア騎手の「神騎乗」で勝ち、ラストランの有馬記念を完勝。「数々の名場面はまだ記憶に新しいところです」と吉田俊代表は話す。
 スピード、スタミナといった身体能力はもちろんのこと。とにかく聡明(そうめい)な馬だった。「物覚えがいいというか、1度経験したことは忘れなかった」と石坂師。担当した日迫助手は、ジェンティルがどんな時に喜ぶかという質問を受け、「レースに勝った時」と答えた。「勝った時は周りの人間がみんな喜ぶでしょ。そんな人の反応を見て、うれしそうにしています」。人の気持ちが分かる競走馬だった。
 今春はキングカメハメハとの間に牝馬を産んだ。名牝の血を受け継ぐ子が、新たなドラマを生み出す。【岡本光男】
 ◆4組目の「親子」顕彰馬 ジェンティルドンナの父ディープインパクトは08年に選定された。父クモハタ-子メイヂヒカリ、父トウショウボーイ-子ミスターシービー、父シンボリルドルフ-子トウカイテイオーに続く4組目となった。