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[ドバイワールドカップ]
タペタトラックとなって5年目のG1ドバイWCは逃げる英国馬ムカドラムを射程圏に入れて内ラチぴったりの好ポジションを進んだ地元の7歳去勢馬アフリカンストーリーが残り300mでスパート。ムカドラムに2馬身半差をつけて優勝した。勝ち時計の2分01秒61はメイダン競馬場に変わってからの最速タイム。墨色に近づいた馬場は例年以上に軽かったようだ。
2着馬から4馬身差の3着にも出走枠の最後に滑り込んだキャットオーマウンテンが入線。実績で見劣り、戦前は注目されなかった馬たちが上位を独占した。
日本から参戦したベルシャザールは馬群中団を追走したが、直線入り口で早くもルメール騎手のムチが入って11着。向正面で2番手に押し上げたホッコータルマエは最終コーナー手前で手応えが怪しくなり、しんがりの16着。想像以上に馬場が応えたようだ。
下馬評の高かった香港年度代表馬のミリタリーアタック(10着)、英ダービー馬ルーラーオブザワールド(13着)、昨年の2着馬レッドカドー(6着)など直線に賭けた芝向きの馬たちは総崩れ。前哨戦を連勝していたプリンスビショップは見せ場もなく9着に終わった。タペタへの適性とともに当日のデキが大きくものを言う結果となった。
勝ったアフリカンストーリーは昨年の5着馬。今年初戦のマクトゥームチャレンジR2でプリンスビショップの2着、前哨戦となったマクトゥームチャレンジR3も同じ相手に8着と着順を下げていて、人気の盲点になっていた。マクトゥームチャレンジR3をステップに2度目の挑戦を実らせたのは2010年のグロリアデカンペオンや12年のモンテロッソと同パターン。メイダンの過去4回の勝ち馬がそうだったように、このレースを制すには逃げ切り、もしくは直線早めに先頭に立つことが絶対条件だ。
今年は史上初めて米国馬の参戦がなく、一部の関係者からはAWトラックをダートに戻す提案が持ち上がるなど、新競馬場開設から5年の歳月を経て、世界最高賞金レースのあり方が見直される時期に来ているようだ。
[ドバイシーマクラシック]
5番手で直線入り口を迎えたジェンティルドンナがものの違いを見せつけて優勝。昨年2着の雪辱を果たした。日本馬の優勝は01年のステイゴールド、06年のハーツクライに続いて3頭目だが、メイダンの芝2410mになってからは初。優勝タイムの2分27秒25は従来のコースレコードを0秒25塗り替えた。
直線でエンジンがかかった時に前を行くアンビヴァレントとジェンティルドンナの外から封じ込めるように馬体を寄せてきたシリュスデゼーグル(C・スミヨン騎手)に行く手を阻まれる大きなピンチに見舞われたが、そこからさらに強いパンチを繰り出した「強さ」こそがジェンティルドンナの真骨頂。行き場を失いながら体勢を立て直して外に持ち出したR・ムーア騎手のとっさの手綱さばきも見事だった。
日々の調教で「馬群の外に出たら全速前進」を教え込まれる欧州調教馬のような競馬にしびれた。デニムアンドルビーが押し出されるように先頭に立つ予期せぬ出来事に目を奪われる間に過ぎた最初のターンでもジェンティルドンナにはツキがあった。2コーナーにさしかかる瞬間、ジェンティルドンナの左斜め後方の最内にいたマーズが馬群を突き破るように突然外に向かって暴走。ジェンティルドンナの尻尾をかすめて後続のドゥナデンの鼻先を横切り、馬群の外にいたエンポリに衝突するなど複数の馬に被害を与えた。コントロール不能となったマーズは向正面で外ラチに激突(R・ヒューズ騎手はラチの外に投げ出されて重傷)して競走を中止したが、もし、あの時に接触があったなら、かなりの痛手を負ったことだろう。
デニムアンドルビーは調子の良さが裏目に出てしまった格好。直線まで浜中騎手の手は動かずにいたが、残り400m地点でアンビヴァレントに並ばれると徐々に後退。息の入らない展開だっただけに敗戦(10着)は致し方ないが、彼女の本来の競馬ができなかったことが悔やまれる。
ジェンティルドンナが2着のシリュスデゼーグルにつけた着差は1馬身半。その走りは日本馬のレベルの高さをあらためて世界に知らしめた。この日のような競馬ぶりなら世界のどこに出ても通用するのではないか。
[ドバイデューティフリー]
名馬誕生の瞬間だった。後方に位置し、残り300mで先頭に躍り出たジャスタウェイが次元の違うフットワークでゴールに突き進む。日本の中距離王者が世界が注視する中で目をみはるパフォーマンスを演じきった。
6戦全勝で底を見せていなかった南アフリカのヴェルシンゲトリクスが必死にもがくも、福永祐一騎手のまとう緑と黒の勝負服は遠のくばかり。5か月前にカリフォルニアでG1BCフィリー&メアターフを制し、層の厚い欧州牝馬のトップグループにのし上がったダンクの姿もかすんだ。2着との着差は6馬身1/4。芝1800mの勝ち時計は前年の覇者サージャーが樹立したコースレコード(1分47秒93)を2秒半も短縮する驚異の1分45秒52。天皇賞・秋で一気に開花した素質は遠くドバイの地で世界の壁を難なく突き破った。父ハーツクライ譲りの成長力があればこその素晴らしいパフォーマンスである。
注文通りの逃げとなったトウケイヘイローだったが、今回はマークがきつくなって息を入れる間を与えられず、直線半ばで馬群に飲み込まれて7着。走りぶりを見ると右回りの、それも馬場を一周する2ターンの競馬の方が向いているように思える。また12番枠から出たロゴタイプは、C・デムーロ騎手が外め中団に誘導して機を狙ったが、ペースが上がるとついて行けず、馬群に揉まれる不利もあって6着に終わった。
英国ブックメーカーの1番人気に推されたザフューグはトウケイヘイローを前に見る絶好位に陣取ったものの勝負どころでW・ビュイック騎手の腕が動き始め、徐々に後退。本来の姿を見せることなく11着でレースを終えた。パンパンの良馬場以外にも目に見えない部分で問題を抱えていたのかもしれない。
ジャスタウェイは5月の香港の2競走に登録があるが、ここは回避する模様。文句なしの勝利でレーティング(123)は超一流馬に与えられる130に近づくことが予想される。これからは名実ともに世界の中距離王としてさらなる高みを目指す。
[ゴドルフィンマイル]
南アフリカの強豪2騎が持てる力を出し切った。優勝したバラエティークラブは外枠発走もダッシュを利かせて注文通りの単騎逃げ。1馬身差の2着したソフトフォーリングレインはライバルに圧力をかけながら2番手という絶好の展開だったが、メイダンのタペタトラックは前が止まらない。勝ちパターンに持ち込んだバラエティークラブの脚色はゴールまで衰えることはなかった。
日本にはないゲートボーイの扶助がうまくいかずスタートで後手に回ったブライトラインは、2強を前に置いて3番手追走の積極策も、直線に入ると不慣れな路面が足を引っ張る。残り50mまで3番手を保ったものの、欧州クラシック馬の意地を見せて猛追したフロティラ(3着)と最内に飛び込んだゴールドシティー(4着)の2頭にかわされて5着で入着した。
バラエティークラブは前哨戦こそ2着に敗れたが、本番はきっちりと仕上げての登場。A・マーカス騎手の的確な手綱とM・デコック師の活躍に刺激されて中東に乗り込んだJ・ラムズデン師の手腕が光った。バラエティークラブの通算成績は22戦16勝、2着4回。マイル戦なら芝でもAWでも高いポジションにいることが明らかになった。
敗れたとはいえ、ブライトラインも勝ち馬から約2馬身半差。10年に4着したグロリアスノア(勝ち馬から3馬身半差)に着順で及ばなかったが、相手関係や初物づくめを考慮すると健闘と言えるのではないか。タペタの実戦を一度経験していれば結果は違ったかもしれない。
なお、勝ったバラエティークラブはひと息入れて、5月4日のG1チャンピオンズマイル(香港・シャティン、芝1600m)に向かう。パワーも十分あり、時計のかかる香港の芝も合いそうだ。
(文:奥野庸介)
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ジェンティル&ジャスタ優勝、日本馬強し
奥野庸介のドバイミーティング回顧
JRA-VAN
2014年3月31日 19:30
日本勢のベルシャ、タルマエは完敗 地元馬がV
タペタトラックとなって5年目のG1ドバイWCは逃げる英国馬ムカドラムを射程圏に入れて内ラチぴったりの好ポジションを進んだ地元の7歳去勢馬アフリカンストーリーが残り300mでスパート。ムカドラムに2馬身半差をつけて優勝した。勝ち時計の2分01秒61はメイダン競馬場に変わってからの最速タイム。墨色に近づいた馬場は例年以上に軽かったようだ。
2着馬から4馬身差の3着にも出走枠の最後に滑り込んだキャットオーマウンテンが入線。実績で見劣り、戦前は注目されなかった馬たちが上位を独占した。
日本から参戦したベルシャザールは馬群中団を追走したが、直線入り口で早くもルメール騎手のムチが入って11着。向正面で2番手に押し上げたホッコータルマエは最終コーナー手前で手応えが怪しくなり、しんがりの16着。想像以上に馬場が応えたようだ。
下馬評の高かった香港年度代表馬のミリタリーアタック(10着)、英ダービー馬ルーラーオブザワールド(13着)、昨年の2着馬レッドカドー(6着)など直線に賭けた芝向きの馬たちは総崩れ。前哨戦を連勝していたプリンスビショップは見せ場もなく9着に終わった。タペタへの適性とともに当日のデキが大きくものを言う結果となった。
勝ったアフリカンストーリーは昨年の5着馬。今年初戦のマクトゥームチャレンジR2でプリンスビショップの2着、前哨戦となったマクトゥームチャレンジR3も同じ相手に8着と着順を下げていて、人気の盲点になっていた。マクトゥームチャレンジR3をステップに2度目の挑戦を実らせたのは2010年のグロリアデカンペオンや12年のモンテロッソと同パターン。メイダンの過去4回の勝ち馬がそうだったように、このレースを制すには逃げ切り、もしくは直線早めに先頭に立つことが絶対条件だ。
今年は史上初めて米国馬の参戦がなく、一部の関係者からはAWトラックをダートに戻す提案が持ち上がるなど、新競馬場開設から5年の歳月を経て、世界最高賞金レースのあり方が見直される時期に来ているようだ。
ジェンティルドンナ優勝、昨年の雪辱果たす
5番手で直線入り口を迎えたジェンティルドンナがものの違いを見せつけて優勝。昨年2着の雪辱を果たした。日本馬の優勝は01年のステイゴールド、06年のハーツクライに続いて3頭目だが、メイダンの芝2410mになってからは初。優勝タイムの2分27秒25は従来のコースレコードを0秒25塗り替えた。
直線でエンジンがかかった時に前を行くアンビヴァレントとジェンティルドンナの外から封じ込めるように馬体を寄せてきたシリュスデゼーグル(C・スミヨン騎手)に行く手を阻まれる大きなピンチに見舞われたが、そこからさらに強いパンチを繰り出した「強さ」こそがジェンティルドンナの真骨頂。行き場を失いながら体勢を立て直して外に持ち出したR・ムーア騎手のとっさの手綱さばきも見事だった。
日々の調教で「馬群の外に出たら全速前進」を教え込まれる欧州調教馬のような競馬にしびれた。デニムアンドルビーが押し出されるように先頭に立つ予期せぬ出来事に目を奪われる間に過ぎた最初のターンでもジェンティルドンナにはツキがあった。2コーナーにさしかかる瞬間、ジェンティルドンナの左斜め後方の最内にいたマーズが馬群を突き破るように突然外に向かって暴走。ジェンティルドンナの尻尾をかすめて後続のドゥナデンの鼻先を横切り、馬群の外にいたエンポリに衝突するなど複数の馬に被害を与えた。コントロール不能となったマーズは向正面で外ラチに激突(R・ヒューズ騎手はラチの外に投げ出されて重傷)して競走を中止したが、もし、あの時に接触があったなら、かなりの痛手を負ったことだろう。
デニムアンドルビーは調子の良さが裏目に出てしまった格好。直線まで浜中騎手の手は動かずにいたが、残り400m地点でアンビヴァレントに並ばれると徐々に後退。息の入らない展開だっただけに敗戦(10着)は致し方ないが、彼女の本来の競馬ができなかったことが悔やまれる。
ジェンティルドンナが2着のシリュスデゼーグルにつけた着差は1馬身半。その走りは日本馬のレベルの高さをあらためて世界に知らしめた。この日のような競馬ぶりなら世界のどこに出ても通用するのではないか。
中距離王者ジャスタウェイが圧巻制覇
名馬誕生の瞬間だった。後方に位置し、残り300mで先頭に躍り出たジャスタウェイが次元の違うフットワークでゴールに突き進む。日本の中距離王者が世界が注視する中で目をみはるパフォーマンスを演じきった。
6戦全勝で底を見せていなかった南アフリカのヴェルシンゲトリクスが必死にもがくも、福永祐一騎手のまとう緑と黒の勝負服は遠のくばかり。5か月前にカリフォルニアでG1BCフィリー&メアターフを制し、層の厚い欧州牝馬のトップグループにのし上がったダンクの姿もかすんだ。2着との着差は6馬身1/4。芝1800mの勝ち時計は前年の覇者サージャーが樹立したコースレコード(1分47秒93)を2秒半も短縮する驚異の1分45秒52。天皇賞・秋で一気に開花した素質は遠くドバイの地で世界の壁を難なく突き破った。父ハーツクライ譲りの成長力があればこその素晴らしいパフォーマンスである。
注文通りの逃げとなったトウケイヘイローだったが、今回はマークがきつくなって息を入れる間を与えられず、直線半ばで馬群に飲み込まれて7着。走りぶりを見ると右回りの、それも馬場を一周する2ターンの競馬の方が向いているように思える。また12番枠から出たロゴタイプは、C・デムーロ騎手が外め中団に誘導して機を狙ったが、ペースが上がるとついて行けず、馬群に揉まれる不利もあって6着に終わった。
英国ブックメーカーの1番人気に推されたザフューグはトウケイヘイローを前に見る絶好位に陣取ったものの勝負どころでW・ビュイック騎手の腕が動き始め、徐々に後退。本来の姿を見せることなく11着でレースを終えた。パンパンの良馬場以外にも目に見えない部分で問題を抱えていたのかもしれない。
ジャスタウェイは5月の香港の2競走に登録があるが、ここは回避する模様。文句なしの勝利でレーティング(123)は超一流馬に与えられる130に近づくことが予想される。これからは名実ともに世界の中距離王としてさらなる高みを目指す。
ブライトラインは直線でかわされ5着
南アフリカの強豪2騎が持てる力を出し切った。優勝したバラエティークラブは外枠発走もダッシュを利かせて注文通りの単騎逃げ。1馬身差の2着したソフトフォーリングレインはライバルに圧力をかけながら2番手という絶好の展開だったが、メイダンのタペタトラックは前が止まらない。勝ちパターンに持ち込んだバラエティークラブの脚色はゴールまで衰えることはなかった。
日本にはないゲートボーイの扶助がうまくいかずスタートで後手に回ったブライトラインは、2強を前に置いて3番手追走の積極策も、直線に入ると不慣れな路面が足を引っ張る。残り50mまで3番手を保ったものの、欧州クラシック馬の意地を見せて猛追したフロティラ(3着)と最内に飛び込んだゴールドシティー(4着)の2頭にかわされて5着で入着した。
バラエティークラブは前哨戦こそ2着に敗れたが、本番はきっちりと仕上げての登場。A・マーカス騎手の的確な手綱とM・デコック師の活躍に刺激されて中東に乗り込んだJ・ラムズデン師の手腕が光った。バラエティークラブの通算成績は22戦16勝、2着4回。マイル戦なら芝でもAWでも高いポジションにいることが明らかになった。
敗れたとはいえ、ブライトラインも勝ち馬から約2馬身半差。10年に4着したグロリアスノア(勝ち馬から3馬身半差)に着順で及ばなかったが、相手関係や初物づくめを考慮すると健闘と言えるのではないか。タペタの実戦を一度経験していれば結果は違ったかもしれない。
なお、勝ったバラエティークラブはひと息入れて、5月4日のG1チャンピオンズマイル(香港・シャティン、芝1600m)に向かう。パワーも十分あり、時計のかかる香港の芝も合いそうだ。
(文:奥野庸介)
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