http://number.bunshun.jp/articles/-/311766
三冠牝馬がJCをも制覇。
三冠牝馬がJCをも制覇。
怪物を退け、王座交代なる。
~非凡さ見せつけたジェンティル~
片山良三 = 文
text by Ryozo Katayama
photograph by Yuji Takahashi
牝馬三冠を成し遂げたばかりのジェンティルドンナ(牝3歳、栗東・石坂正厩舎、父ディープインパクト)が、史上最高とも言われる超豪華メンバーが集結した第32回ジャパンカップ(11月25日、東京、芝2400m、国際GI)を、あっさりと制した。
3歳の牝馬としては初めての快挙。64年ぶりに牝馬のダービーウィナーとなったウオッカも成し得なかった(4着敗退)難事を、オルフェーヴルという怪物がいるステージでやってのけたのだから、手放しで称賛されていい。
逃げ馬不在でペースは速くならないと読めるからこそ、どの馬にも難しいレースになった。特に、凱旋門賞に続いて大外枠をあてがわれたオルフェーヴルは、折り合いに格別に気を遣い、前半は馬群の後ろにつけて我慢させるしかなかった。
それでも3コーナー過ぎからこの馬らしい俊敏なギアチェンジを見せ、直線入口で2番手までポジションを上げてきたときも余力は十分。鞍上の池添謙一騎手も、この時点で勝利を疑わなかったろう。
一方ジェンティルドンナも外から3つめの15番枠。やはり不利な枠順だったが、こちらは折り合いに苦労しなくてもいい従順な気性が作戦の立てやすさにつながった。岩田康誠騎手の、「馬場は内側の状態が断然よかったので、スタートを決めて早めに好位のインに潜り込む作戦だった。直線に向くところまでは完璧に乗れたと思う」というコメントを聞けば、脚力だけではない、プラスアルファの能力が高いジェンティルドンナの競走馬としての非凡さが伝わってくる。
接触事件はあったが、オルフェーヴルを上回る脚を使った事実。
岩田騎手が「直線に向くところまでは」と、自らの完璧な騎乗に注釈をつけざるを得なかったのは、そのあとにオルフェーヴルとの接触事件があったからだ。逃げていたビートブラックの失速で、後続とは次元が違う脚で叩き合う2頭にとっては、その存在が障害物となった。
先に抜け出そうとしたオルフェーヴルに、ビートブラックとの隙間から並びかけたプレーが「強引」と裁定されて岩田は2日間の騎乗停止。それでも着順はそのままで、史上最強牝馬が公式に誕生した。
あと味が悪い、とは不思議と感じなかった。鼻差ではあるが、怪物を上回る脚を使った後継馬はここに確かに存在した。来年こそ、凱旋門賞で日の丸が上がるのを見られるかもしれない。
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