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▼観戦記 長岡利幸 |
ジェンティルドンナが三冠を達成した。普通に◎にしたが、ローズSで内にモタれ、右回りでも十分過ぎるほど強いのだけれど本質的には左利きかも知れないという危惧の念があった。しかし、パドックに現れた時に馬体を見た瞬間、そんな不安は消し飛んだ。それほど素晴らしかった。馬場入場後、岩田騎手が落とされるというちょっとしたハプニングはあったが、これはご愛嬌。結果はハナ差でも上位に入線した馬はこの馬を除きすべて4角まで内を通ってきたのだから、14番枠を克服しての勝利には着差以上の評価を与えていいと思う。JRA史上4頭目の快挙だった。父娘揃って三冠となるとこれはJRA史上初めてである。この後は「強い牝馬」として並み居る男馬を蹴ちらして欲しいと思う。そして、三度あることは四度あった。一矢を報いることは叶わなかったけれどヴィルシーナの頑張りは凄かった。押して押してハナに立った。逆転するためには最良の戦法だ。向正面でチェリーメドゥーサに先に行かれたことが誤算だったか。いや、これは想定内だったと思う。直線の二枚腰は迫力があった。考えてみるとジェンティルドンナ以外の牝馬には負けていないのだから、この馬もまた相当強いといえる。いい秋華賞だった。 |
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▼観戦記 吉岡哲哉 |
上がり3ハロン32秒7~9を使った馬は4頭いたが、いずれも後方待機組。所詮は後の祭り。この位置で折り合って、この上がりを駆使できる馬に軍配が上がったようである。秋華賞15着、新潟記念17着を除けば、ローズS2着以降、(3)(4)(5)(6)(4)着。ホエールキャプチャとは再三、接戦を演じてきたが、この手のタイプの取捨は難しく、だから、10番人気。勝ち方は伏兵のそれではないが、大一番での勝負弱さはついて回るかも知れない。 1番人気ドナウブルーは坂上から猛然と伸びたが3着。432キロはVマイル2着時と同じ。馬体減が敗因ではない。敗因は前半でムキになって走ったことに尽きる。折り合いひとつで距離克服は可能だが、やはり、マイラーはマイラーなのだろう。 さて、ホエールキャプチャ。2番人気、単4.3倍のオッズだから、みんながみんな大幅な信頼を置いていたわけではない。同じ休み明け、同じような馬体重でも、中山牝馬Sの時とは攻めの中身が違った。前を行くスマートシルエットとほぼ同じに追い出したが、いつもならそこからギアが一段上がるのに、まったく反応しない。アクセルを踏んでもまったく前へ進んで行かない、そんな感じで馬群に沈んでしまった。クロフネ産駒は案外、勝負弱くて、ひとたびスランプに陥ると容易には立ち直れない、そんなイメージを私は持っている。巻き返しがあるのかどうか、何とも微妙な状況にあると言わざるを得ない。 |
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▼血統編 水野隆弘 |
府中牝馬Sに勝ったマイネイサベルはテレグノシスの産駒。トニービン直仔の父はNHKマイルC、毎日王冠、京王杯スプリングCとすべての重賞勝ちを東京で挙げただけに、今のところ唯一の重賞勝ち産駒である娘の復活の舞台はやはり東京だった。母マイネレジーナは函館3歳SとクイーンSで2着となった活躍馬で、祖母の産駒には東京記念のガンガディーン、ラジオたんぱ杯2歳S、中京記念のメガスターダムがいる。4代母タイイサミの孫オーバーレインボーはダート時代の札幌記念を連覇、同じくダニッシュガールはこのレースの前身である牝馬東京タイムズ杯に勝った。5代母ハマイサミの曾孫にはジャパンCのレガシーワールドがいて、プロポンチスに遡る小岩井牝系。古くからの名門に祖母の父マルゼンスキーからニジンスキーと米国血脈、母の父サンデーサイレンスが入ることで現代的なパワーが加わっている。トニービン×ノーザンテーストの父は初年度2007年の種付け46頭から2010年には14頭まで減っていたが、マイネイサベルが新潟2歳Sに勝った翌年の2011年には26頭にまで盛り返している。ジャングルポケットが孤軍奮闘のトニービン系だけに、今回の勝利が父の人気回復を後押ししてくれればとは思う。 東京ハイジャンプではデンクオクトパスが春の東京ジャンプSに続いて重賞2勝目。父マヤノトップガンにとっても2つ目の重賞制覇となった。父系祖父がブライアンズタイム、母の父がリズムなので、ロベルト系×ミスタープロスペクター系のニックスとなり、リズムのミスタープロスペクター×ノーザンダンサー+ラトロワンヌ牝系という極上の良血が生きることになる。牝系は4代母の孫にサセックスS2着など欧州のマイルで活躍したグリーンラインイクスプレスがいる程度だが、祖母はサドラーズウェルズ×サーアイヴァーの欧州クラシック血統。米国血脈のブライアンズタイム、欧州血脈のアルプミープリーズ、米国血脈のリズム、欧州血脈のスポーデズブルーという祖父母の代のいわばシンプルな反復がスピードと持久力の確保に役立っていると思える。 |
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