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2014年の総決算、有馬記念。今年もこのレースを最後に引退する名馬がいる。3月にドバイDFを圧勝、ワールドベストホースランキング1位となったジャスタウェイ。牝馬三冠をはじめジャパンC2連覇など牡馬と混じり活躍したジェンティルドンナ。初のマイルの舞台で武豊騎手のGI100勝目に華を添えたトーセンラー。クラシックではジェンティルドンナの2着に泣きながらもヴィクトリアMを連覇したヴィルシーナ。彼らが築き上げた一時代が、幕を閉じようとしている。その勇姿をこの目に焼き付けるため、ラストランにかける陣営の思いを直撃した。(取材・文・写真:大恵陽子)
ワールドベストホースランキング1位のジャスタウェイが、有馬記念でラストランを迎える。
3歳時にアーリントンCを勝ち、重賞ウィナーの仲間入りを果たしたが、僚馬にはゴールドシップというスターがいた。確かな実力を持ちながらも、スターの影に隠れがちだったジャスタウェイは、2013年の天皇賞・秋でその力をいかんなく見せつけた。
前年の年度代表馬ジェンティルドンナを相手に4馬身差の圧勝劇。父ハーツクライから受け継いだ成長力も後押しし、スター街道を一気に駆け上がった。この勝利は、大和屋暁オーナーにとっても、初めて所有した愛馬での初GI制覇という非常に思い入れの深いものとなった。
そうして挑んだ今春のドバイDF。6馬身1/4差、レコードでの圧勝劇には、国内のみならず世界からも評価され、日本調教馬では初となるワールドベストホースランキング単独1位を獲得した。「海外GIも勝てたのは、応援してくださったファンのみなさんのおかげだと思っています」と須貝尚介調教師は感謝を口にする。
世界一の馬のラストランが刻一刻と近づいてきた。凱旋門賞からの帰国初戦となった前走ジャパンCを振り返り、福永祐一騎手は「良化途上にありながら、馬は大変がんばりました」と讃える。世界最高峰の厳しい戦いと、長時間の飛行機輸送を経て帰国してから2か月弱。2着で、世界一の意地を見せた。須貝調教師も「ジェンティルドンナから離れずレースを、という指示を出していました。2400mの距離が持つことも分かりましたね」と話す。
国内とは馬場など条件が異なる凱旋門賞を除き、ジャスタウェイが2400m以上のレースに出走したのは先日のジャパンカップと日本ダービー(11着)の2回のみ。2500mとなる有馬記念。
「距離が延びてプラスになるか? と言われれば、プラスにはならないと思います。競馬場も、中山か東京かだったら、東京のほうがいい。でも、そんなベストでない条件でも、状態面はすごくいいです。ジャパンCよりも馬体にハリが戻り、追い切りでいい感触を持てました。全てを跳ね返してくれるだけの状態の良さです」と、福永騎手は胸を張る。
須貝調教師も「ジャパンカップの後、様子を見るため少しラクをさせましたが、馬は具合が良くなっています。それで距離延長などをカバーできれば」と話す。
有馬記念でラストランを迎えた後、1月4日に京都競馬場で引退式を迎える。世界一の馬に、距離やコースといった条件は関係ないのかもしれない。
並み居る強豪牡馬を相手に強さを見せつけてきた牝馬三冠馬ジェンティルドンナは、1週前追い切りに戸崎圭太騎手を迎えた。
「迫力のあるフットワークで、安心ですね。初めてレースで跨った天皇賞・秋よりも前向きさが出てきました」と、戸崎騎手は順調さを語る。
最終追い切りは「軽く気合をつける併せ馬」と石坂正調教師。「この秋は3走目ですし、このくらいで十分です。タイムもこんなものでしょう。順調です」と続ける。
前人未到の3連覇を目指した前走ジャパンCは4着。発表こそ良馬場だったが、雨の影響が残っていた。「馬場が緩かったのが、悔いが残りますね」(石坂師)
かつては、三冠馬オルフェーヴルと馬体がぶつかり合う接戦の末、下した舞台。この馬の力は、こんなものではない。
石坂調教師は「あと1回、ジェンティルドンナを見てほしい、という思いがあった」という。「去年までの暮れの中山は馬場が悪く、有馬記念はトリッキーなコースなので、正直ジェンティルドンナは使いたくないなと思っていました。でも、今年は馬場も良さそうですね」(石坂師)と、スタンド改修により例年秋の開催がなかったことで、いいイメージを抱く。
牝馬は中山で走る機会が少なく、ジェンティルドンナもラストランにして、初めての中山となる。しかし、今年のリーディングをほぼ手中に収めた戸崎騎手は「乗りやすくて賢い馬なので、不安はありません」と前を見つめる。
2度目の騎乗にして、名牝のラストランの手綱を握る戸崎騎手は「有馬記念は、普段競馬を見ない人も見て、一番盛り上がる大一番。依頼をいただき幸せです。いいパフォーマンスを見せないと、という責任感がありますね。有名馬ですから、無事に帰ってきたいとも思います」(戸崎騎手)
「たくさん応援していただき、ファン投票も選んでいただきありがとうございます。最後のレースなので、中山(有馬記念)に行こうと決めました。精一杯走れる状態にあります。レース後には引退式もあります。ぜひ、見てやってください」と、石坂調教師は海外GIを含め6勝を飾った愛馬への思いを締めくくった。
有馬記念当日に引退式を行い、お母さんになるため故郷に帰る。
2013年。天皇賞・春で2着だったトーセンラーは、秋にマイルCSという大幅な距離短縮路線を選んだ。
3200mから半分の距離を選択したことについて、管理する藤原英昭調教師はこう説明する。
「一度マイルは使ってみたいと思う素質がありました。でもそれ以上に、得意の京都コースを使いたかったんです」
これまで12戦した京都コースでは、一度も掲示板を外したことがない。
「京都でGIとなれば、天皇賞・春かマイルCSしかないからね。またあの頃、体力がしっかりとしてきたので使うことにしました。やはり短距離GIを使おうと思ったら、体力が充実しないと厳しいです。
素質の高さを感じていたので、それをいかに殺さず開花させるかといった成長が課題でした。でも、成長を待つのは大変。ただ時間をかけるだけでなく、基礎訓練をしっかり丁寧にやっていきました。他のスポーツや、楽器の演奏でも基礎練習は大切でしょ!?」と、その重要さを話す。その成果が実を結び、初のマイル戦でGI制覇を成し遂げた。
前走、連覇を目指したマイルCSは4着だったが、内の馬が残る馬場で外から脚を伸ばしてきた。
「時計的にもよく走っています。有馬記念は距離が延びますが、賢くて自在性のある馬です。前走より馬は良くなっていますし、追い切りに騎乗した武豊騎手の評価も高いです。有馬記念が京都なら良かったんですが(笑)、今のラーなら、中山でも大丈夫です!」
2011年3月11日、東日本大震災を宮城県の山元トレセンで被災した。皐月賞が控える中、道路は寸断され栗東に帰ってくるのも一苦労だった。
「よく復活してくれました。感謝の気持ちです。ドラマを持った馬ですし、武豊騎手のGI100勝目を飾った馬でもあります。引退後は、種牡馬入りしますが、ラストランをハッピーエンドで飾って欲しいですね」
これまで数々のドラマを生んだ有馬記念で、ラストランに挑む。
史上初のヴィクトリアM連覇を成し遂げたヴィルシーナ。
秋初戦に予定していた府中牝馬Sは、腰に疲れがあったため回避し、エリザベス女王杯へ直行となったが、一度使ったことでラストランへ向けて大きな上昇カーブを描いている。
「内田博幸騎手が跨った1週前追い切りでも、自分からハミをとって、この馬のいい頃の感じになってきました。冗談で“同一GI(ヴィクトリアM)3連覇を狙います”って言いたいくらい、具合はいいです」と友道康夫調教師は、ハリのある体とメンタルの良化に笑顔を見せる。
最終追い切りに騎乗した調教パートナーの竹之下智昭騎手も「(エリザベス女王杯を使って)順調に上向いています」と話す。
今春は、ヴィクトリアM連覇から、牡馬相手の宝塚記念で3着と、いい流れを作った。
「うまく逃げ粘った宝塚記念よりさらに直線が短くなる中山コースは、もっと展開の助けを借りることができると思います。持ち味の“並ばれたら抜かせない根性”を生かす競馬をしてほしいですね」
そう期待を込める友道調教師は、新馬戦でヴィルシーナに対する期待値が大きく上がったという。
「函館で調教をして、前日に札幌へ輸送したんですが、環境の変化に戸惑っていないかなと心配し、レースの朝、馬房まで様子を見に行ったんです。そしたら、横になって寝てたんです。“なかなか大物だな”って思いました。レースでも能力を見せてくれましたしね」
2歳牝馬にして、環境の変化に動じないメンタルと、デビュー戦では馬群の最内から突き抜ける能力を見せた。翌年2012年は、年度代表馬となったジェンティルドンナとクラシック三冠で接戦を演じ、2013年はヴィクトリアMで念願のGI制覇。“大魔神”こと元メジャーリーガーの佐々木主浩氏にとってもこれが嬉しい初GI制覇となった。
しかし嬉しさも束の間、夏休みを挟むと長いトンネルに入ってしまった。闘志を復活させるため、調教やレース選択などに工夫をこらし挑んだ今年のヴィクトリアMは「オーナーと一緒にゲンを担いで、勝利した昨年と同じ行動パターンをとったんです(笑)。嬉しかったですね! やっぱりこの馬はすごいなと思いました」(友道師)
再び掴んだ栄光は、厩舎にとっても嬉しいものだった。安田晋司調教助手はこう話す。
「一応担当は僕になっていますが、他の馬の調教に乗ることも多く、手入れやひき運動には、ほとんどのスタッフが携わりました。みんなの協力と助け合いがあってのGI勝利ですし、みんなに可愛がってもらったからこその、人懐っこいヴィルシーナだと思います」
母ハルーワスウィートは、開業して最初に預託が決まった馬だ。「思い入れのある血統で、これからはヴィルシーナの仔を走らせるのが楽しみです。ジェンティルドンナとは、これからは産駒での勝負になるでしょうね」と友道調教師は嬉しそうに話した。
安田調教助手も「ヴィルシーナの仔を担当できることになったら幸せやろなぁと思います。しなやかさが伝われば、産駒も走ると思いますよ」と目を輝かせた。
『引退』という響きにはどこか物悲しさが伴う。しかし、名馬にとって引退は、決して淋しいものではない。彼ら・彼女たちには、その強さを次世代に継ぐというこれからの仕事が待っている。
次なるステップへ向けて、笑顔と大きな声援でターフから見送ってあげたい。(了)
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有馬でラストランを迎える名馬たち
引退戦にかけるそれぞれの思い
netkeiba.com
2014年12月26日 11:55
ベストでない条件でも状態面はすごくいい
3歳時にアーリントンCを勝ち、重賞ウィナーの仲間入りを果たしたが、僚馬にはゴールドシップというスターがいた。確かな実力を持ちながらも、スターの影に隠れがちだったジャスタウェイは、2013年の天皇賞・秋でその力をいかんなく見せつけた。
前年の年度代表馬ジェンティルドンナを相手に4馬身差の圧勝劇。父ハーツクライから受け継いだ成長力も後押しし、スター街道を一気に駆け上がった。この勝利は、大和屋暁オーナーにとっても、初めて所有した愛馬での初GI制覇という非常に思い入れの深いものとなった。
そうして挑んだ今春のドバイDF。6馬身1/4差、レコードでの圧勝劇には、国内のみならず世界からも評価され、日本調教馬では初となるワールドベストホースランキング単独1位を獲得した。「海外GIも勝てたのは、応援してくださったファンのみなさんのおかげだと思っています」と須貝尚介調教師は感謝を口にする。
世界一の馬のラストランが刻一刻と近づいてきた。凱旋門賞からの帰国初戦となった前走ジャパンCを振り返り、福永祐一騎手は「良化途上にありながら、馬は大変がんばりました」と讃える。世界最高峰の厳しい戦いと、長時間の飛行機輸送を経て帰国してから2か月弱。2着で、世界一の意地を見せた。須貝調教師も「ジェンティルドンナから離れずレースを、という指示を出していました。2400mの距離が持つことも分かりましたね」と話す。
国内とは馬場など条件が異なる凱旋門賞を除き、ジャスタウェイが2400m以上のレースに出走したのは先日のジャパンカップと日本ダービー(11着)の2回のみ。2500mとなる有馬記念。
「距離が延びてプラスになるか? と言われれば、プラスにはならないと思います。競馬場も、中山か東京かだったら、東京のほうがいい。でも、そんなベストでない条件でも、状態面はすごくいいです。ジャパンCよりも馬体にハリが戻り、追い切りでいい感触を持てました。全てを跳ね返してくれるだけの状態の良さです」と、福永騎手は胸を張る。
須貝調教師も「ジャパンカップの後、様子を見るため少しラクをさせましたが、馬は具合が良くなっています。それで距離延長などをカバーできれば」と話す。
有馬記念でラストランを迎えた後、1月4日に京都競馬場で引退式を迎える。世界一の馬に、距離やコースといった条件は関係ないのかもしれない。
例年なら中山は使いたくなかったが
「迫力のあるフットワークで、安心ですね。初めてレースで跨った天皇賞・秋よりも前向きさが出てきました」と、戸崎騎手は順調さを語る。
最終追い切りは「軽く気合をつける併せ馬」と石坂正調教師。「この秋は3走目ですし、このくらいで十分です。タイムもこんなものでしょう。順調です」と続ける。
前人未到の3連覇を目指した前走ジャパンCは4着。発表こそ良馬場だったが、雨の影響が残っていた。「馬場が緩かったのが、悔いが残りますね」(石坂師)
かつては、三冠馬オルフェーヴルと馬体がぶつかり合う接戦の末、下した舞台。この馬の力は、こんなものではない。
石坂調教師は「あと1回、ジェンティルドンナを見てほしい、という思いがあった」という。「去年までの暮れの中山は馬場が悪く、有馬記念はトリッキーなコースなので、正直ジェンティルドンナは使いたくないなと思っていました。でも、今年は馬場も良さそうですね」(石坂師)と、スタンド改修により例年秋の開催がなかったことで、いいイメージを抱く。
牝馬は中山で走る機会が少なく、ジェンティルドンナもラストランにして、初めての中山となる。しかし、今年のリーディングをほぼ手中に収めた戸崎騎手は「乗りやすくて賢い馬なので、不安はありません」と前を見つめる。
2度目の騎乗にして、名牝のラストランの手綱を握る戸崎騎手は「有馬記念は、普段競馬を見ない人も見て、一番盛り上がる大一番。依頼をいただき幸せです。いいパフォーマンスを見せないと、という責任感がありますね。有名馬ですから、無事に帰ってきたいとも思います」(戸崎騎手)
「たくさん応援していただき、ファン投票も選んでいただきありがとうございます。最後のレースなので、中山(有馬記念)に行こうと決めました。精一杯走れる状態にあります。レース後には引退式もあります。ぜひ、見てやってください」と、石坂調教師は海外GIを含め6勝を飾った愛馬への思いを締めくくった。
有馬記念当日に引退式を行い、お母さんになるため故郷に帰る。
今のトーセンラーなら中山でも大丈夫
3200mから半分の距離を選択したことについて、管理する藤原英昭調教師はこう説明する。
「一度マイルは使ってみたいと思う素質がありました。でもそれ以上に、得意の京都コースを使いたかったんです」
これまで12戦した京都コースでは、一度も掲示板を外したことがない。
「京都でGIとなれば、天皇賞・春かマイルCSしかないからね。またあの頃、体力がしっかりとしてきたので使うことにしました。やはり短距離GIを使おうと思ったら、体力が充実しないと厳しいです。
素質の高さを感じていたので、それをいかに殺さず開花させるかといった成長が課題でした。でも、成長を待つのは大変。ただ時間をかけるだけでなく、基礎訓練をしっかり丁寧にやっていきました。他のスポーツや、楽器の演奏でも基礎練習は大切でしょ!?」と、その重要さを話す。その成果が実を結び、初のマイル戦でGI制覇を成し遂げた。
前走、連覇を目指したマイルCSは4着だったが、内の馬が残る馬場で外から脚を伸ばしてきた。
「時計的にもよく走っています。有馬記念は距離が延びますが、賢くて自在性のある馬です。前走より馬は良くなっていますし、追い切りに騎乗した武豊騎手の評価も高いです。有馬記念が京都なら良かったんですが(笑)、今のラーなら、中山でも大丈夫です!」
2011年3月11日、東日本大震災を宮城県の山元トレセンで被災した。皐月賞が控える中、道路は寸断され栗東に帰ってくるのも一苦労だった。
「よく復活してくれました。感謝の気持ちです。ドラマを持った馬ですし、武豊騎手のGI100勝目を飾った馬でもあります。引退後は、種牡馬入りしますが、ラストランをハッピーエンドで飾って欲しいですね」
これまで数々のドラマを生んだ有馬記念で、ラストランに挑む。
持ち味の“並ばれたら抜かせない根性”で
秋初戦に予定していた府中牝馬Sは、腰に疲れがあったため回避し、エリザベス女王杯へ直行となったが、一度使ったことでラストランへ向けて大きな上昇カーブを描いている。
「内田博幸騎手が跨った1週前追い切りでも、自分からハミをとって、この馬のいい頃の感じになってきました。冗談で“同一GI(ヴィクトリアM)3連覇を狙います”って言いたいくらい、具合はいいです」と友道康夫調教師は、ハリのある体とメンタルの良化に笑顔を見せる。
最終追い切りに騎乗した調教パートナーの竹之下智昭騎手も「(エリザベス女王杯を使って)順調に上向いています」と話す。
今春は、ヴィクトリアM連覇から、牡馬相手の宝塚記念で3着と、いい流れを作った。
「うまく逃げ粘った宝塚記念よりさらに直線が短くなる中山コースは、もっと展開の助けを借りることができると思います。持ち味の“並ばれたら抜かせない根性”を生かす競馬をしてほしいですね」
そう期待を込める友道調教師は、新馬戦でヴィルシーナに対する期待値が大きく上がったという。
「函館で調教をして、前日に札幌へ輸送したんですが、環境の変化に戸惑っていないかなと心配し、レースの朝、馬房まで様子を見に行ったんです。そしたら、横になって寝てたんです。“なかなか大物だな”って思いました。レースでも能力を見せてくれましたしね」
2歳牝馬にして、環境の変化に動じないメンタルと、デビュー戦では馬群の最内から突き抜ける能力を見せた。翌年2012年は、年度代表馬となったジェンティルドンナとクラシック三冠で接戦を演じ、2013年はヴィクトリアMで念願のGI制覇。“大魔神”こと元メジャーリーガーの佐々木主浩氏にとってもこれが嬉しい初GI制覇となった。
しかし嬉しさも束の間、夏休みを挟むと長いトンネルに入ってしまった。闘志を復活させるため、調教やレース選択などに工夫をこらし挑んだ今年のヴィクトリアMは「オーナーと一緒にゲンを担いで、勝利した昨年と同じ行動パターンをとったんです(笑)。嬉しかったですね! やっぱりこの馬はすごいなと思いました」(友道師)
再び掴んだ栄光は、厩舎にとっても嬉しいものだった。安田晋司調教助手はこう話す。
「一応担当は僕になっていますが、他の馬の調教に乗ることも多く、手入れやひき運動には、ほとんどのスタッフが携わりました。みんなの協力と助け合いがあってのGI勝利ですし、みんなに可愛がってもらったからこその、人懐っこいヴィルシーナだと思います」
母ハルーワスウィートは、開業して最初に預託が決まった馬だ。「思い入れのある血統で、これからはヴィルシーナの仔を走らせるのが楽しみです。ジェンティルドンナとは、これからは産駒での勝負になるでしょうね」と友道調教師は嬉しそうに話した。
安田調教助手も「ヴィルシーナの仔を担当できることになったら幸せやろなぁと思います。しなやかさが伝われば、産駒も走ると思いますよ」と目を輝かせた。
『引退』という響きにはどこか物悲しさが伴う。しかし、名馬にとって引退は、決して淋しいものではない。彼ら・彼女たちには、その強さを次世代に継ぐというこれからの仕事が待っている。
次なるステップへ向けて、笑顔と大きな声援でターフから見送ってあげたい。(了)
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